ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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このお話はリクエストを基にしたものです。
リクエストくださったみみこ様、ありがとうございましたv


原作以上の内容です。
結構甘めでかなりバカップルな二人になってます^^;


<ただいまおかえり>



ソファの背もたれに無造作に掛けられた薄茶色のコート。
少し埃っぽいそれを手に取り羽織ってみると、通常ならば感じる事のない異常な重みが背中に圧し掛かり、足がふらついた。
同時に鼻を刺激するタバコの匂いと、その中に混じる硝煙の匂いがあまりに強くて、思わず顔を顰める。
何の変哲もないコートのように見えて、実はそうではないリョウ愛用の服。
それはまるで、これまでのリョウの生い立ちを物語っているようにも見えて。
その違いを感じ取る度、心に鈍い痛みを覚え悲しくなった。
でも今は、悲しみは薄らいで、嬉しさが色濃くなっている。
コートで全身を包むと、どうしようもなく安堵して、自然と頬が緩んだ。
一週間振りに感じるリョウの気配に、心がゆっくりと解れていった。


リョウは、冴子から持ち掛けられた厄介な依頼を片付ける為、一週間新宿を離れていた。
リョウが家を空けた直後は、冴子の利益を伴わない理不尽な要求や、彼女に対しての的外れな嫉妬で苛立っていたのだが、それは次第に寂しさや不安へと摩り替わり始めて。
その日の夜、電話口でリョウの声を聞いた香は、危うく泣いてしまいそうになった。

毎日ずっと一緒にいて、ケンカだってしょっちゅうするくせに。
一週間なんて大した事はないと、高を括っていたのに。
当たり前のようにある存在を感じられない事が、こんなにも辛い事だとは思いもよらず。
電話を切る直前、受話器から聞こえた『おやすみ』の声に胸が詰まって、上手に言葉を返せなかった。
それから毎夜かかってくる電話に出るのが、実は苦痛だったりして。
元気な声を聞けるのは、安心するし嬉しいのだが。
半端にリョウを感じると、寂しさがどんどん積み重なっていくから、電話の呼び出し音を聞く度に複雑な思いが胸中を駆け巡った。


一週間振りに帰って来たリョウは、疲労困憊といった様子で、頭から爪先まで全身汚れていた。
リビングの入り口でその姿を見た香は、少し言葉を交わした後、リョウをバスルームへと押しやった。
久々に見るその実体に、本当は抱き付きたい衝動に駆られたが、さすがにそのなりでは感動の抱擁というわけにもいかず。
それに、疲れた様子を見せてはいたが、リョウの無事な姿を確認出来ただけで、心に溜まったもやもやが消えてとても安心したから。

コートを羽織ったままソファへ座ると、突然凄まじい眠気に襲われた。
そういえば三日程前からあまり睡眠を摂取出来ていない。
精神的に疲弊している為それなりに眠かったのだが、どうしてもリョウの事が気になって、寂しくて。
ずっと浅い眠りを繰り返していたのだ。

リョウの匂いに包まれて気が緩んだ途端、瞼が重くなって勝手に視界を閉ざそうとする。
もうすぐリョウがお風呂から出てくる頃、眠っては駄目だ。
そう思うが、ゆらゆらと揺れる安堵感が心身を癒して、白い世界へと誘おうとする。
優しい誘惑は、まるでリョウに抱きしめられているような錯覚を見せるから、香はそれに抗えずにそのまま意識を手放した。


「なぁにやってんだぁ、お前は」
まだろくに乾いていない髪を荒々しく拭きながらリビングへと戻って来たリョウは、ソファに横たわる物体を見て呆れ顔で呟く。
ひょっとして驚かせようと狸寝入りでもしているのかと思い、横に腰を下ろし香を暫し観察した。
小さく開かれた口からは、規則正しい息が零れて。
それに合わせてまるい肩が、緩やかに動いている。
「こりゃマジ寝、だな。ったく、こんなところで眠ったら風邪引くっつうの…」
完全に眠っている事を確認したリョウは、香を起こそうと肩に伸ばしかけた手を、触れる手前で止めた。

薄い笑みを浮かべて眠る顔は、少しだけ青白くて。
伏せられた睫の下には、くすんだ色合いが仄かに広がっている。
そして自分のコートで全身を包んで、本当に気持ちよさそうに寝入っているものだから、リョウは肩に伸ばした手を彷徨わせて徐に軟い髪へと伸ばした。
久しぶりに触れるくすぐったい手触りと体温に、知らず顔が綻ぶ。
そしてそれは、すぐに切なさを含ませたものへと変わった。
背を丸くして眠る姿に、ちくりと胸が痛んだ。

思えばこんなに長い間離れて過ごすのは、今回が初めてで。
香がそばにいない不自由さに、リョウは思いの他てこずった。
物足りなくて、侘しくて、イラついて、必然的にタバコの本数も増えて。
だが仕事を完遂するまでは、どう足掻いても帰る事は出来ないのだから、リョウは怒涛の勢いで奮闘したのだった。
きっと香も同じ心境だったに違いない。
決して寂しいとも、早く逢いたいとも、それらしい事は一度も口にしなかったが。
悲しみを隠す為に気丈に振舞う明るい声が、明確な言葉達よりも、彼女の心を雄弁に語っていた。

暫し穏やかな寝顔を見つめていたリョウだったが、次第に言いようのない不愉快な気持ちが顔を出し始める。
それは眠ってしまった香に対してではなく、この一週間自分の身を守り、今は香を覆い隠している『武器』に対して芽生えた感情。
共に戦ってきた事に対しては、大いに敬意を払おう。
だが、香を安心させてやれるのも、抱き締めてやるのも、お前の役目じゃない。

「香、起きろ」
リョウは少し躊躇ったが、香を起こすべく声をかけた。
数回名を呼び肩を揺すると、香は身動ぎして意識を浮上させた。
「おい、起きろ」
「…ん……!!」
ぼうとした瞳で瞬きをしていた香の脳内に、リョウの声が届いた途端、香は勢いよく体を起こした。
「…あ、私…いつの間に…」
「何こんなところで、爆睡してんだよ。」
「ご、ごめん」
「おまけに、こんなもんまで被って」
リョウは口角を持ち上げてにやりと笑うと、コートの裾をくいくいと引っ張った。
「お前、俺に抱かれてるみたい、なんて少女趣味な事考えてたんだろ?」
「ちっ、違うわよっ!」
からかいの言葉が図星で恥ずかしくなった香は、羽織っていたコートをリョウに投げつけると、声を荒げて否定した。

きり、と目を吊り上げて顔を赤くしている香の姿に、リョウはしまったと内心後悔する。
捻くれてる上に、意地悪な性格は生まれつきだ。
相手への拘りが強いほど、その厄介な性質は顕著に現れる。
ずっと寂しい思いをひた隠しにしていた香。
こんな時ぐらい、素直に抱き寄せて甘えさせてやりたいのに、どうして怒らせるような事をしてしまうのか。
これでは、薄汚れたコートのほうが余程利口というものだ。
リョウは自分自身の愚かしさに深く溜息をつくと、香に苦笑してみせた。

「そんなもん、着たりするなよ」
「え?」
「そんな事しなくても」
まだ少し怒っている香の手を引き寄せ、力任せに掻き抱き肩口に顔を埋めた。
突然抱きすくめられたせいか、小さな悲鳴が耳を掠める。
仄かに甘い匂いを感じたリョウは、堪らず更に深く抱き込む。
「そんな事しなくても、俺が抱いてやるのに」
「リョ…」
「こんなもんで安心して、眠ったりするな。このアホ」

そう言った後で、リョウは迂闊だったと冷や汗を掻き始める。
ずっと恋しかった柔らかい温もりについ気が緩んで、言わなくてもいい事までうっかり喋ってしまった。しかもすこぶる不機嫌な音声で。
これでは、まぬけな嫉妬心を思いきり晒しているようなもの。
恐る恐る香を胸から引き剥がすと、案の定香は肩を震わせて必死に笑いを堪えている。
今にも弓形になりそうな瞳が、リョウの子供染みた発言を笑い飛ばしてやろうと、きらきらしていた。
「…な、何だよ」
「…べ、別に。…あ、やっぱ、もうダメっ…」
その先はやはり言葉にならず、香は盛大に噴出すと腹を抱えて笑い始めた。

さすがにこれは笑われても仕方ないと諦めたリョウは、香が落ち着くまで辛抱強く待つ事にした。
だが、なかなか笑いを治めようとしない香に、次第に痺れを切らせ始める。
「おい、いつまで笑ってんだよ」
「ご、ごめん。あんまりおかしな事言うから。コートにやきも…くくっ」
目尻に浮かぶ涙を拭いながら、ようやく落ち着きを見せた香は、不貞腐れるリョウに近付いた。
「眠ってた事は謝るわ。凄く気持ちよかったから、つい」
「…別に怒っちゃいねぇよ」
少しぶっきらぼうな口調のリョウに、香は肩を竦める。
「それに、リョウとじゃゆっくり寝れない…でしょ?」
少し声のトーンを落としながら上目遣いでそう言った香は、顔をほんのり赤らめ俯いた。
その言葉の真意を読み取ったリョウは、なるほどと納得する。

確かに自分とでは、安らかな心地で眠る事は出来ないだろう。
間違いなく、疲れ果てた結果強制的に眠りに就く事になる。
いつもならば、お前の言う通りだと押し倒して、事を始めたくなるところだが、今日のリョウは少し違う心境だった。
多分疲れているせいもあるのだろうが。
一週間の空白は、肉体的な部分よりも精神的な部分を蝕んでいたようで、今夜は静かに、ただ単純に香を抱いて眠りたいと、そう思っていた。
だが、それは一時の気の迷いで、やはり手を出してしまうかもしれないと思い至ったリョウは、確認作業を試みる。

「香、ちょっと」
「え?な、何よ」
手招きするリョウを少し警戒しながらも、香は素直にリョウに接近した。
小首を傾げ訝しむ香をよそに、リョウは目の前の体をぎゅうと抱きしめてみる。
数秒経過するが、リョウの体には何の変化もない。
いつもなら瞬時に反応する箇所が、この体勢にもかかわらず落ち着いたままだという事は。

「うん、やっぱり大丈夫そうだ」
「?」
リョウは疑問符を浮かべる香の背中をとんとんと叩くと、自信たっぷりに宣言した。
「今日は、もっこりなしで眠るぞ」
「…は?」
「だから、今日は大人しく寝ようって言ってんの」
「…う、うそぉ!?」
信じられないといった様子の香はリョウから離れると、頭部や体をぺたぺたと触り始めた。
「何、してんだよ」
「いや、あんたがそんな事言うなんて、どこか怪我してるか頭でも打ったんじゃないかと思って」
至極真面目な顔で失礼な事を言う香をじと目で見ると、リョウは自分の周りをチョロチョロする香を制止した。
「あのなぁ、人を変態扱いするんじゃねぇ。俺だってそういう時もあんの!」
「…そういう、もんなの?」
「そういうもんなんだよ!」

どうやらその発言に裏はないようで、香はほっとしたような、でも少し寂しいような物足りなさを小さく感じた。
睡眠不足なのだから、ゆっくり休めるのは嬉しいけど。
一週間も接触していないのだ、この男にしてみれば耐え難い事だったに違いない。
絶対迫ってくると心の準備をしていた香は、何だか拍子抜けしてしまった。

「あれ、もしかしてシたかった?」
「バ、バカ!違うわよ!」
リョウは気の抜けたような香をひやかすと、さっきのお返しとばかりにわざとらしく笑ってやった。
「香がどうしてもって言うなら、シてもいいけどぉ」
「誰もそんな事言ってないでしょうが!」

「まぁ、その前に、これをしてもらわんと」
上から目線で物を言われ赤面して怒る香の前に、ぐっと顔を近付けると己の唇を指差した。
「おかえりのキス」
「へっ!?」
この男にはあまりに不似合いな可愛いセリフに、一瞬固まってしまった香。
早くしろ、と迫る唇にあたふたしながらも近付こうとしたが、そこはぐっと堪えて踏み止まる。
掴みどころのない男のパートナーを長年務めているだけあって、彼女の性格も結構癖があり素直ではない。おまけに相当な負けず嫌いだ。
ひやかされた上に笑われては、そう簡単にリョウの言うなりになどなりたくない。

香はニヤニヤと笑うリョウの顔を遠ざけると、先程のリョウと同じ動作を真似てみせた。
「その前に、ただいまのキスが先!」
「お、そうきたか」
予想外の香の反撃にリョウは小さく驚いたが、段々と愉快になってきて更に笑みを深めた。

こんなふうに頭に血がのぼると周りが見えなくなるところは、厄介だけど可愛くもある香の特徴。
自分でも気付かないうちにキスを強請っているその微笑ましい姿に、リョウは破顔した。
ついその愛くるしい表情に引き寄せられそうになるが、こんなに面白くて楽しいシチュエーションはもっと堪能しなければ損だ。

二人は一歩も譲らず自分の意思を貫こうと、滑稽なにらめっこを始めた。
暫く挙動を止めたまま見合っていたが、その滑稽さに気付いた二人は、次第にバカらしくなってきて。
視線を絡めたまま同じタイミングで瞬きすると、二人して噴出した。

ただいまおかえり

基本は出会った頃と同じで、何ら変わらないから、何をするにもスムーズにはいかないが。
余計なしがらみを越えた二人は、互いに素直になる心地よさを知っているから、余計な駆け引きなど長続きはしない。
久しぶりに共有した甘いひとときに浸っていた二人は、ゆっくりと微笑み合うと、静かに口付けを交わした。
一週間振りのそれは、まるで初めてのキスを思い出させるような、ぎこちなさを漂わせていて。
異様な高揚感に襲われたリョウは、さっきの宣言を撤回せねば、と密かに思うのだった。





<あとがき>
『カオリンがリョウのコートを羽織るシチュ』というリクエストをくださったみみこ様。
とんだバカップルな二人になってしまいスミマセン^^;
甘々を目指していたら、いつの間にかお砂糖を入れ過ぎてべとべとになってしまいました…。
だらだらとまとまりのない文章ですが、楽しんでいただければ幸いでございます…。
自分では思いつかないシチュエーションだったので、とても楽しく妄想させていただきました!
素敵なリクエスト、本当にありがとうございました!!
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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