ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このお話はリクエストを基にしたものです。
リクエストしてくださった方、ありがとうございました!



以前書きました学園パラレル『maybe』の続きです。
ですのでこのお話は、『maybe』を先に読まれてからの閲覧をお薦めします。

<come closer>



頬杖ついてため息なんて、らしくないと友達に言われた。
確かにそうだ、自分でもそう思う。
一つの事にうじうじ悩むなんて、私らしくない。
でも気が付くと、ぼんやりして物思いに耽っている。
あの日からずっと、心の隅っこがぼうと霞んだまま落ち着かない。


頭の中で繰り返される映像は、初冬の風が冷たかった屋上での出来事。
毎度毎度授業をサボる問題児を連れ戻す為屋上へ向かった香は、彼から交換条件を突き付けられた。
『キスしてくれたら、金輪際サボるのを止める』そう言われたのだ。
香は唐突な提案にうろたえながらも、その条件をはね返す。
彼の気まぐれに振り回されるなんて真っ平御免だ。冗談じゃない、と。
そんな否定的な態度の香に待ち受けていたのは、宣戦布告のような額へのキス。
冗談などではなく本気なのだという、意思表示だった。


実はあの日を境に、リョウは無断欠席する事がなくなった。
もちろんあの一方的な条件を飲んだわけでも、恋仲になったわけでもないのだが。
真面目に学業に励んでいるかは定かではないが、とりあえず大人しく席に着いているのだ。
その事自体は、香にとってとても喜ばしい事だった。
もうあんな煩わしい思いをしなくてもよいのだから。

しかし両手を挙げて喜んだのも束の間、新たな問題が浮上する。
リョウの執拗なアプローチが始まったのだ。
友人の前だろうとお構いなしに、馴れ馴れしく話しかけてきたり。
ふとした瞬間目が合えば、とびきりの笑顔を見せるのだ。

香に親しげに接するリョウに、最初は首を傾げていたクラスメイト達だったが、その光景が日常化すると次第にあらぬ噂が立ち始めたりして。
親しい友人に至っては、既に付き合っていると解釈しているようで、ひやかされる事もしばしば。
いつだったか、リョウを密かに慕う女生徒達に、刺すような視線で睨まれた事もあった。

あの時屋上で、『俺はしつこいから』と言われたが、こんな事態になるなんて予想だにしていなかった。
ほとほと困り果てた香は皆の誤解を解く為にも、派手な言動を控えるように抗議しようと試みる。
だが、いざリョウの前に立つと、思う事の半分も言えなかった。

軽い言葉達にも、向けられる笑顔にも、やわらかい優しさが垣間見えるから、それに気付く度に怒りが大きな戸惑いに摩り替わってしまって、上手に言葉が紡げなかったのだ。



香は胸に溜まったもやもやを吐き出すように溜息をつくと、大きく深呼吸した。
古書独特のインクの匂いと、少し埃っぽい空気が体内に入り込む。
一人になりたくて、心を落ち着かせたくて訪れた図書館。
香はこの場所がお気に入りだ。
読書家というわけではないが、この空間に浸るとなんだか心が休まるのだ。

壁時計に目をやる。時刻は16:30。
別館の最上階に位置するこの部屋は、人影もまばらでとても静かだ。
香は閲覧スペースの奥に置かれた長椅子に座り、夕焼けを眺める。

何の目的もなくぼんやりとしていると、考えるのはやはりリョウの事だ。
彼を思うと心がくすんで見えなくなる。
一つ一つの行動に囚われそうになって、揺れ惑って。
明らかにからかっているのならば、それなりに対処のしようもあるのだが。
そうではない事を分かっているから、困惑する。
彼の事は嫌いではない。というより、こうして意識しているのだから、きっと特別な感情があるのは確かだ。
でもそれを素直に受け入れて、彼へ歩み寄る事には躊躇いがある。

香はリョウの事を何も知らない。
友達という間柄でもなかった人間に、急に迫られたところでOKサインを出す事など無理な話。
彼の事を知りたいと思う反面、それと同じ比率で相反する思いも彼女の中に存在している。
今以上心理的な距離を縮めたら、得体の知れない何かに飲み込まれそうな気がするのだ。
あの強く深い瞳に映る度に、圧倒されて尻込みしてしまう。
普通の恋愛では済まなくなりそうで、なんだか怖い。


硬質な靴音が静寂を破り、香の思考は途切れる。
音のする方に目をやった香は小さく息を飲んだ。体に緊張が走る。
ゆっくりとした歩調で近づく長身の男。
その特異な雰囲気が、香を悩ませる人物だという事を知らせていた。
徐々に大きくなる靴音を聞きながら、香はやはりと微苦笑する。
根拠は何もないが、何となくリョウがこの場に現れるような、そんな気がしていたのだ。


「何してんの、こんなところで」
香の前で歩みを止めたリョウは、彼女を見下ろし微笑む。
ずっとあなたの事を考えてた、なんて正直に言えるはずもなく。
香は一度リョウと目を合わせると、ついと視線を逸らした。
「ここ、いいか?」
「…どうぞ」
机を挟んだ向かい側の長椅子を指差し、この場に留まりたい意思をあらわにするリョウに、香は短く答えた。

香は密かに溜息をつく。せっかく一人心静かにしていたのに。
きっと、可愛いだの、デートしようだの、いろいろ賑やかに言ってくるに違いない。
香はこの後の展開を予想し、項垂れた。
が、いつまで経っても彼の声が聞こえない事に疑問を感じ、そっと様子を窺う。
そこには、いつもうるさく自分に付き纏っている人物とは思えない程の、静けさを纏ったリョウがいた。
香は思わず目を見張る。

夕日に照らされた端正な横顔が、薄茶色に透き通る瞳が、とてもきれいで。
輪郭に当てられた節くれ立つ指の力強さと、滑らかさに、鼓動が乱れた。


「なぁ」
「…えっ」
いつもと様子の違うリョウに気を取られていた香は、窓の外に目を向けたまま発せられた声に驚く。

横顔のまま一度瞬きをした切れ長の目は、赤い空から香へと移される。
視線を香に留めて、ゆっくりと向かい合った。

「俺の事、好きになってくれた?」

真正面から射抜かれた問い掛けに、香は体を強張らせた。
穏やかで真剣な。そして若干の鋭さを含ませた表情。


なんてずるい男なんだろう、そう思った。
今まで何度となく聞かされた言葉と同じフレーズ。でも全く違うもの。
他の気配を感じる時には見せなかった本気を、2人きりになった途端ぶつけてくるなんて。

思えばこれまでリョウと純粋に向き合ったのは、一度だけだ。
あの時屋上で彼の意外な一面を見つけて、驚きとときめきが胸中に交錯した。
今目の前にいる彼は、あの時見る事のなかった、香の知らないリョウ。
日常のアプローチはなんとかかわす事が出来たが、今の彼の前ではそれは出来そうにない。
逃げる事は許さない。真っ直ぐに向けられた瞳が、そう語っていた。


「どうして」
「?」
「どうして、私なの?」

香はリョウの質問には答えず、逆に問い返した。

どうしても分からなかった、一つの疑問。
特別美人なわけでもない、特殊な才能を持つわけでもない、ごく普通の女の子だ。
彼ならば、自分よりももっと相応しい女性がいるだろうに。
なのにどうして彼は自分を好きだと言うのか。

香の予想外の問いに、リョウは二度三度目を瞬かせると、困り顔で頭を掻いた。
どうしてだなんて、なんて厄介な事を聞いてくるのだ。
リョウは肩を竦めて、答えを待つ彼女を見やる。


「知りたい?」
香は無言で頷き、答えを催促した。
リョウはゆっくり立ち上がると、反対側に座る香の隣に腰を下ろす。
近づいた距離を激しく意識した香は、少しだけリョウとの間合いを取った。

香が未だに見せる遠慮や戸惑いを少し残念に思いながら、リョウは小さく笑う。
「どうしてかなんて、そんなの、俺にも分からん」
「…は、なにそれ」
不鮮明な回答に、香はぽかんと口を開ける。
分からないなんて無責任な言葉が返ってくるとは、思いもしなかったのだ。
「理由なんて、そんなもんはない。気が付いたら、好きになってた」

香を静かに見つめたまま、緩やかに落とされた言葉。
それは、ふざけているわけでも、からかっているわけでもない、リョウの本心だった。

物怖じする事のない澄んだ瞳が、精神の脆い部分に強烈に焼き付いて、いつの間にか惹かれていた。
その心に理屈なんて、何もない。
彼女の存在を記憶する度に湧き出る感情を、言葉で言い表す術など持ち合わせてはいないし、回りくどいやり方は性に合わない。
だから、繰り返し伝えるのだ。端的に分かり易い方法で。


「だけど、嬉しいなぁ」
「え…」
「そんな事を聞くって事は、俺に興味があるって証拠だろ?」
「べ、別にそういうわけじゃ」


顔を赤らめて反論する香を見ながら、じんわりと溢れるぬくもりを感じていた。
このぬくもりが愛おしくて堪らない。直に触れたくて、手を伸ばしたくなる。

「ちょっと、ここに手置いて」
「え?」
「いいから」

不可解なお願いに訝しむ香をよそに、リョウは木製の机に手を置くように促す。
香は首を傾げながらも、リョウに従った。

躊躇いがちに動いた手。白くて、細い。
この手を引き寄せ、抱き締める事は容易い。
自分へと傾きかけている心を、手繰り寄せる事も。
だが、それを強行しては意味がない。
彼女自ら動いてくれなければ。
そこに彼女の意思が伴わなければ、心は満たされない。


大きな手が、白い手を覆い隠す。
緊張のせいか、少し冷えたそれがリョウの体温を感じ、微かに揺れた。
動揺を無視して、冷たい手をそっと包んだ。逃さないように。


「もし」
「…」
「もし、俺の事を知りたいのなら、もっと近づいてくれないと。じゃなきゃ、伝えようがない」

重ねた手に力を込めると、大きな瞳に戸惑いの色が滲む。


これ以上は、中途半端な距離では伝えられない。分からない。
惑う心のままでも構わないから、近づいて欲しい。もっと、もっと。


「好きだ」


静寂に包まれた空間に響いた声は、優しさと切なさが混在していて、香の胸を縛り付けた。
甘く焦がれた告白が、揺れる内側を捉える。
これまでにない真摯な瞳孔が、深淵にある塊を溶かしていった。

リョウに対して恋愛感情があるのか、まだよく分からない。
でも、重ねられた手も、射抜くような瞳も、振り解けなくて。
息苦しいような、それでいて心地いいこの衝動の理由を知りたい。
彼の事を知りたいのかもしれない、そう思ったから。
接近する彼の気配に、静かに瞳を閉じた。


触れ合う一歩手前で止まり、一拍の後重なった唇。

熱の篭る意識の中で、香は少し驚いていた。
少し乾いた唇は、とても繊細な動作で、控え目に触れてくるから。

橙色に染まる世界で交わした初めてのキスは、微かに甘くて。
彼の掌から伝わるぬくもりのような、蕩ける優しさに溢れていた。

ゆうぐれの





<あとがき>
高校生パラレルの『ツンデレリョウ×香』が見たいとのリクエストだったので、以前書いた「maybe」という学園パラレルの続きを書いてみました。
すみません、ツンツンもデレデレもしてないですね^^;
放課後の図書館で初キス、なんてベタな内容になってしまいました。
MAYの発想貧困な頭では、これが精一杯でございます…。
リクエストくださった方、拙い文章とイラストですが読んでいただければ幸いでございます。
リクエスト、ありがとうございました!!
スポンサーサイト

コメント

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://qazzz.blog31.fc2.com/tb.php/452-61a336ef

MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

名前:
メール:
件名:
本文:

この人と友達になる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。