ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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クリスマスネタ第二弾です。
本当は24日にUPしようと思っていたのですが、一日早くしました。
原作以上でほんのり甘めの内容です。



<きらめき>



「うぅ、寒い」

胸前で腕を交差させ肩を摩りながら漏れた声は、白い息となりふわりと宙へ上っていく。
カチカチと歯がぶつかって、体は自然と小刻みに震える。
そうなってしまうのは、深々と冷える12月の寒空の下にいるからだ。
そして、やるせない怒りを感じているから。

今日は12月24日、クリスマスイブ。
大半の人々は大切な人と、思い思いの夜を過ごしているだろう。
しかし香は今、冷たいコンクリートの影に身を潜め、一人息を殺している。
目に映るのは、煌びやかなイルミネーションではなく、単調な色合いの火の粉。
耳に飛び込んでくるのは、心躍るようなクリスマスソングではなく、腹の底に響くような轟音だ。


この時期になると、世間の人間は浮き足立ち、無防備になり易い。
だから、浮かれた隙だらけの人間を狙う輩が必然的に増殖するわけで。
そうなると当然、この業界も大いに賑わう事となるのだ。

年中開店休業状態の冴羽商事も、この時期だけは例に漏れず多忙になる。
それは香にとって様々な意味で有難かった。
仕事があるという事は、常に死活問題を抱えている香にとっては、涙が出るほど幸せな状況。
それに仕事があれば、どういう形であれリョウと一緒にいられる。
色気もクリスマスもあったものではないが、少なくとも一人でイブを過ごすという事態だけは回避出来る。
かなりポジティブな思考でなければ成立しない自論だが、香にとってはやはり有難かった。

だがそれは、去年までの話。
今年はそんなおめでたい考え方なんて、出来るはずがなかった。
恋人同士なんて表現はまだ照れ臭いが、リョウとそういう関係になってから迎える初めてのクリスマス。
香にだってそれなりに、憧れや淡い想いがある。
なにも豪華なシチュエーションもプレゼントも、期待していない。
ただ、いつもより少し贅沢な食事をして、ケーキを食べて。
好きな人と静かにイブを過ごしたい、そう思っていた。

香は若干の後ろめたさを感じながら、密かに祈り続ける。
どんなに忙しくてもいいから、せめて24日だけはスケジュール帳が空白になるようにと。
だが香の願いは叶う事なく、無情にも依頼は舞い込んだ。
香は苦悩した挙句、泣く泣く依頼を引き受ける決断をする。
日頃どんな依頼だろうと引き受けると豪語しているだけに、私的な理由で依頼を蹴る事など出来なかったのだ。


あまりの寒さに膝を抱えて小さく丸くなる。
虚しくて、悲しくて、泣きそうだ。
幸せなイブを過ごす事は、そんなに贅沢な事だろうか。
この世界に身を置く以上、人並みの日常を送れない事ぐらい、百も承知だ。
しかも今は仕事中、こんな事を考えるのはある意味不謹慎かもしれない。
でも、せめて、初めてのクリスマスぐらい平和に過ごしたかったと思わずにはいられない。
香は、切ない溜息をを吐き出した。


「か・お・り・ちゃん」
「ひっ…」

ずしんと落ち込んでいた香は、背後に現れた気配に気付かず、驚きに漏れそうになった声を慌てて堪えた。
「リョウ…」
「よ、大人しく待ってたか?」
ニヤリ、と笑う大男は全身埃まみれ。頬の所々に血が滲んでいる。
「うん」
少し息を乱しながら隣に座る男を一瞥すると、短く答え再び膝を抱いた。
「もう、片付きそう?」
「ん~、それがなぁ、あちらさんもなかなかしつこくて、もう暫くかかりそうだ」
さらりと言われ、香はがっくりと肩を落とす。

これで完全に望みは絶たれた。
あと1時間程で、今日が終わる。
早く依頼が片付けばケーキぐらいは一緒に食べられるかも、なんて儚くも可愛い願いは、これでもう叶わない。

愛銃に弾丸を補填する男をちらりと盗み見ると、なんだか沸々と怒りが込み上げてきた。そして切なさを大きくさせる。
口元を緩ませた横顔は、いつもと変わらない。だから、腹が立つ。
落胆する気持ちに気付かないその表情は、まるでクリスマスなんてどうでもいいと言ってるみたいで。
この日を一緒に過ごせる事を心待ちにしていた自分との想いに大きな差異を感じて、やるせなくなった。


「これで、よし、と」

補填が完了したようで、銃を懐に納めるとリョウは息を吐き瞼を閉じる。
再び現れた前を見据える瞳が、さっきとは違い複雑で、香は一瞬怒りを忘れ目を見張った。

「あーあ、まったく、皮肉なもんだよな」
「え?」
「いっつも思いっきり暇なくせに、今日に限って仕事なんて」
リョウは一度天を仰ぐと、盛大に溜息をつき、項垂れる。
「本当は香チャンの美味しい手料理を食べて、その後香チャンを美味しくいただこうと思ってたのになぁ」
リョウは控えめに笑うと、隣で凝視する香を引き寄せコートの中に仕舞った。
「ホント、ついてねぇよな」

必ず幸せにする、なんて大それた事は言ってやれない。まして、約束なんて。
でも、出来うる限り香の望む事を叶えてやりたい、そう強く思うのに。
たった一日の特別な日を2人で過ごすだけの、簡単な願いさえ叶えてやれないなんて。

こんな時、後悔の影が過ぎるから謝りたくなるが、それを言葉には出来ない。
香が不満を口にするような性分なら、それに便乗して謝罪出来るのだが、残念ながら香は決してそれをしないのだ。
そうする事が、リョウを責める事になるのだと、そう思っているから。
それに、もし今ここでこの事態を詫びても、同じように香は気遣うだろう。
だからリョウは何も言えず、冷えた体を抱きしめる。



「さて、いつまでもこんな所にいたら風邪ひかせちまうな。すぐ片付けてくるから、もう少しだけ待ってろ」
暖かなコートの中から急に冷たい外気に触れ身震いしている香は、小さく頷いた。

「あ、そうだ」

再び仕事に向かおうとしていたリョウは立ち止まり、小走りで香の元へと舞い戻る。
やけに真面目な顔をしたかと思えば、急にそっぽを向いたりして。
統一感のない動作に、香は首を傾げる。
コホンと一つ咳払いをすると、リョウは冷たい香の手を乱暴に取り、自分のコートの中へと突っ込んだ。
そして数秒後、先程の動作を巻き戻しする。

香は目を瞬かせて、リョウに操られた手を見つめた。
まるで手品のような俊敏さだったから、視界に映るまで気付かなかった。
手には、細長く小さな箱が握らされていた。

「リョウ、これって」
「ま、なんだ、その、あれだ」
「…」

到底説明になっていないが、つまりそれはクリスマスプレゼントだと言っているリョウを、大きな目が見上げる。
薄闇でもはっきりと確認出来る程赤面しているリョウを、からかう余裕なんてあるわけなく、香は頭を乱暴に掻くリョウをじっと見つめるだけ。

「一応、その、初めてなアレなわけだし、ちゃんと今日中に渡した方がいいかな、と思ってだな」

あまりに歯切れの悪い言い方は滑稽過ぎて、でも香には愛おしさしか感じられず、嬉しさに涙目になった。
リョウも同じ想いでいてくれた事が嬉しくて、堪らなくて。
そして、少しだけ拗ねてしまった事を、心の中で恥ずかしく思って。


「…あ」
「…あ?」

思いがけないプレゼントに喜びを噛み締めていた香だったが、ある事を思い出し顔面蒼白になる。
実は24日が仕事だという事がショックで、プレゼントを用意していなかったのだ。
リョウはちゃんと用意してくれていたのに、自分は何もしないで不満を募らせるなんて。
香は申し訳なさ気に、リョウを見上げる。

「あの、ゴメン。私、プレゼント用意してなくて」
「は?ああ、別に、俺は物はいらん」
かくりと項垂れる香の頭上にころんと一言落とすと、リョウは口の端っこを持ち上げて笑う。
「でも、それじゃ」
「じゃあ、今からお願いするモンくれよ」
「…なに」

リョウは最高にいやらしい笑みを浮かべると、この先の展開が何となく読めているのか、微かに引きつっている香の鼻先にぐっと近づいた。
「この仕事が片付いてから、3日間、お前の時間を全部くれ」
やっぱり、と心の中で叫ぶと、香は一歩後退した。
こんな顔をしている時は、とんでもない事を考えているのだという事を承知しているから、香は冷や汗を掻き始める。

「リョウちゃん、香チャンがいてくれれば、それだけで何にもいらない」
有難くその言葉を受け取りたいところだが、だらしなく崩れた顔で言われても、丁重にお断りしたくなる。
乾いた笑い声を上げながら後退する香を壁際まで追い詰めると、リョウはがばりと覆いかぶさった。
強く強く抱きすくめられ、香はごくんと息を飲む。
帰ったら

可愛らしい動揺を感じ取ったリョウは、薄く笑い、冷たい耳元に唇を寄せて。
「帰ったら、一緒に暖まろうな」
甘く優しい声は、凍える体を瞬時に温め、香の体温をぐんと上昇させる。
香は熱に浮かされたようにぼうとなり、無意識にその誘惑に頷いていた。

ぽかぽかになった頬に軽くキスをして、名残惜しげに体を離す。
「んじゃ、もうひと頑張りしてくるわ」
これから一暴れしようとしている人間とは思えない緊張感ゼロの男は、ひらひらと手を振りながら闇の中へ消えていった。


香はかさついた唇の感触が残る頬を押さえながら、握っている小さな箱に意識を向ける。
「開けて、みようかな」
暫し逡巡したが、香は梱包を解き始める。
なんだか異常にドキドキする。
プレゼントを開ける時は、どちらかというとワクワクするものだが。
手が震えて上手に開けられないのは、寒いからじゃなくて、この異様な高揚感のせい。

ようやく包装を解き、ゆっくりと箱を開ける。
「うわぁ」
雲間から月光が差したから、確かめられたそれ。
淡い光を受けてきらりとひかるものは、小さな石が集められたハート型のネックレス。
様々な角度に輝きを放つ石は、香の誕生石であるアクアマリンだ。

優しいきらめきをこれ以上見ていたら、なんだか泣きそうで、香はそっと箱を閉じる。
零れかけた涙をぐいと拭うと、白い月を見上げた。
冬の空は澄んでいて、まっさらな光がとても美しい。

望んだものとは違った一日だったが、思えばこれが私達らしいのかもと、そう思う。
暖かい食事もケーキも、それらしいものは楽しめなかったけど。
なにより大切なものを、変わらず与えてくれる人が、自分にはいるから。
それは、本当に幸せな事。
妥協や諦めではなく、素直にそう思える。

耳に届く轟音が消えたら、サンタクロースのプレゼントを待つ子供のような顔で、ここに飛んでくるだろう。
そして、風のようにひゅんとさらって。
それから先を想像すると、嬉しいような、少し怖いような。
それでも自然と頬が緩んでしまうのは、幸せで満たされているから。

香は小さな箱を優しく胸に仕舞うと、早鐘のように鳴る鼓動を聞きながら、大切な人を静かに待つのだった。




<あとがき>
クリスマスネタ第二弾でした。こてこてのべたべたですみません><
甘々のイヤンなものにしようと思ったのですが、ここはCHらしくほんのり甘めで攻めてみました^^
拙文ですが、楽しんでいただければ幸いです…。
皆様よいクリスマスをv
(甘いクリスマスじゃなくてゴメンね、香ちゃん^^;)
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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