ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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アニメオリジナルSS(リョウちゃんが香ちゃんにマフラーをプレゼントするお話)にまつわるお話です。
アニメをご存じない方でも、ご理解いただける内容です^^





<medicine>


夕食後リビングで過ごすひとときは、一日の中で最も安らげるお気に入りの時間だ。
だが、香の表情はどこか暗く何度も溜息を零している。
今日は朝から憂鬱が体中に充満していて、心が晴れない。
香をブルーな気分にさせている諸悪の根源は、目の前でだらしなく寝そべるぐうたら男だ。

その気だるそうな風体は、まるで真夏の動物園のライオンのよう。
一日中これといって何をするでもなく、寝て、起きて、食べて、また寝る。この繰り返し。
それ以外の行動といえば、如何わしい愛読書を眺めるぐらいだろう。
いくら裏の世界の頂点に君臨する男と言えど、こんなみっともない姿を見せられてはその実態を疑いたくなる。
覇気のない表情からは、威厳も風格も微塵も感じられない。

目の前の男に辟易しつつ、香は今日一日の自分の行動を顧みて、更に沈み込む。
彼女の一日の大まかなスケジュールは固定されているが、その大半がリョウの身の回りの世話と言っても過言ではないのだ。
パートナーなのだからそれは当然の事だろう、と言われてしまえばそれまでなのだが、香はどうも釈然としない。
いくら仕事とはいえ、四六時中のほほんとしている男の世話を焼いていれば、不満の一つも出てくるのが当たり前だ。

憂鬱な気持ちになったのは朝、洗濯をしていた時の事だ。
プラスチック製のカゴの中から取り出したのは、男のトランクス。
体格のよいリョウのそれは、標準サイズの人間が穿けばすとんと落ちてしまう程大きい。
香はその大きな下着を、何の抵抗もなく洗濯機へと放り投げる。
パートナーになりたての頃は恥じらいもあったが、今ではそんな可愛らしい感情はすっかり消え失せ、タオル類と同じレベルで扱っていた。

ふとそんな事を思った香は、何ともやるせない気分になってしまったのだ。
日常に流され忘れていたが、自分はまだ未婚、結婚はおろか男性と深いお付き合いなどした事もない年頃の女の子だ。
それなのに夫でもない、まして彼氏でもない男の下着を普通に洗濯している事実に、軽いショックを受けたのだった。

香は重い気持ちを引き摺りながら、掃除、伝言板の確認、そして財布の中身を思慮しながらの堅実な買い物と、一日の仕事を真面目にこなしていく。
アパートへと帰り着いた香はいつになく疲弊していた。精神的に。
これではまるきり役に立たないダメな夫を健気に支える妻のようではないか。そう思えてならなかったのだ。

これがもしも、リョウも自分と同等に、汗水流して仕事に精を出す人間ならば。
恋人、夫婦と言った明瞭な関係であったならば、こんなに虚しい気分にはならないだろう。
だがリョウは、どの条件にも当て嵌まらない人間だ。
職種上、不定期かつ不安定な仕事という事は当然理解している。
彼氏や夫になどなりえない事も、もちろん分かっていた。
だが、だからと言ってこの現状を正当化するには、やはり抵抗がある。

明らかに自分の方が働いているし、アパート内で快適に過ごせるのは自分のお陰だと自負している。
与えられた役割だとしても、日常においての男との差はいかがなものかと思うのだ。
見返りを要求するわけではないが、何か労りがあってもいいのではないかと言いたくなる。

その一言を飲み込み我慢出来るのは、リョウに対して特別な感情があるから。
恋心がなければ、こんな理不尽な仕事などとっくに投げ出しているだろう。
リョウがこの想いに応えてくれる可能性は、極めて低い。
なにしろ無類の女好きで、美女ならば見境なく欲情するとんでもない男だ。
その男に『お前はもっこりしない唯一の女だ』、とあっさり烙印を押された。
想いを叶えるのは恐らく無理だろうと思う。

しかし、諦めの気持ちは常にあるものの、時折見せる優しさや暖かい眼差しに、都合のいい勘違いをしそうになる事もあった。
妙な期待をしてしまうのだ、もしかしたら、と。

掴みどころのない男に芽生えた想いの行く先を考えると、仕事とは別の意味で落ち込みそうになる。
毎日の単調な生活にも、リョウへの恋情にも、今の香には気分を高揚させる要素を見出せなかった。



「あの、香チャン?」
「…なに?」
「俺、何かした、かな」
「え?」
「いや、さっきから、痛い視線を感じるんで…」

ふにゃ、と情けない顔で自分の様子を窺うリョウに、香は更に表情を険しくする。
どうやらいつもと違う自分の気配に、少し怯んでいるようだ。
「別に、何でもないわよ。ただちょっと疲れてるだけ」
思う事を口に出来るわけもなく、体で感じている事を率直に伝える。
「あ、そう」
香の素っ気ない声に、リョウもそう言ったきり閉口した。


「俺、そろそろ寝るわ」
ポツリと漏らすと、らしくないよそよそしい仕草でリョウはリビングのドアへと向かう。
いつもなら勝手に口をついて出るおやすみの言葉も、今日は言える気分ではない。
香は無言のまま、離れていく後姿を横目で見た。

ドアの手前で後姿がぎこちなく半回転し、リョウと目が合う。
その瞳が不自然に宙を彷徨うから、香は訝しんだ。
「あ、お前が出掛けてる間に、お前宛に荷物が届いてたぞ」
なぜか棒読みな言葉を吐きながらリョウが指差したソファの端に、なにやら白い紙袋が置いてある。
荷物と思しき物体に一度目をやり再び視線を戻すと、やはり先程と同様に落ち着かない様子のリョウと目が合った。
「じゃ、俺寝るから。お前も早く寝ろ。ガキみたいに腹出して風邪拗らせたりするなよ」
一気に捲くし立てると、リョウは逃げるようにリビングを後にした。


「なに、今の」
一人残った香は、リョウの態度に疑問を感じながら、自分宛に届いたという紙袋に手を伸ばす。
手に取ってよく見ると、何か違和感を覚えた。
届けられた荷物にしては、梱包が酷く雑で粗末だ。それに送り状のような物がどこにも見当たらない。
どこからどう見てもただの紙袋なのだ。

疑問に思いながら、開封口を止めてあるシールを剥がし中を覗く。
暖色系の柔かい布のような物が確認できた。
中身を取り出し広げると、それは両腕を広げても若干弛んでしまう程の長い布。
これは、どうみてもマフラーだ。
優しい色合いと心地よい手触りに、思わず感嘆の声が漏れる。

ふわふわな生地の感触を楽しみながら、香は考える。
一体誰がこれを自分に向けて届けたのだろうか。
送り状がないので差出人は不明だし、そもそも届け物というのも怪しい。
差出人の手掛かりを見つける為、香はもう一度袋を手にした。
若干の重みを感じ中を覗くと、小さな箱のような物が見えた。
先程見た時は、マフラーの下に隠れて分からなかったらしいその箱を取り出す。
「…風邪薬?」
透明なフィルムに覆われたそれは、未開封の風邪薬だった。

箱を見つめながら、記憶の端に引っ掛かりを覚える。
香は鼓動を僅かに早めながら、先程のリョウの言動を思い出し、推理を始める。
あの時リョウは確か、風邪を拗らせるなと言っていた。
風邪をひくな、ではなく、拗らせるなと。
まるで自分が風邪をひいている事を前提とした物言いだった。
実は昨晩から喉に痛みを覚え、それは現在も続き少し悪化していた。

もしこの症状をリョウが気付いていたとして。
そしてそんな自分を心配して、マフラーと風邪薬を用意してくれたのだとしたら。
そんなぼんやりとした頼りないシナリオが出来上がった。

かなり強引な推測かもしれないが、不自然さはないと香は思う。
届けられた物だという、差出人不明の簡素な紙袋。
らしくない、挙動不審なリョウの態度。
そして、風邪をひいている事を既に知っていたようなあの発言。
これらの事柄を一まとめにすれば、この二つのプレゼントをくれたのはリョウ以外に考え難い。

元来捻くれた性格の男だ、普通に手渡す事も、労わりの言葉を掛ける事も、すんなりとやってのける事が出来なかったのだろう。
恐らく散々悩んだ挙句、すぐに分かるような嘘しか言えず、憎まれ口を叩くという不器用な方法しか取れなかったのだ。
「こういうのはさ、ちゃんと手渡しで欲しいわよね」
マフラーをくるりと巻いてそう呟くと、自然と笑いが込み上げた。
うれしいよう

風邪薬はともかくこのマフラー、一体どんな顔して買ったのだろう。
恐々と自分の様子を窺っていた情けない顔、リビングを出る時の不貞腐れたような照れたような表情は、今思えばかなり貴重なもので笑えてくる。
今日はあまり言葉を交わしていないというのに、体調の変化に気付いていたなんて、なんだか堪らなく嬉しい。
どうせならもう少し素直になって、ちゃんとプレゼントして欲しかった。

止まらない笑いに肩を震わせながら、香の心には様々な想いが生まれるから、それまで心を支配していた憂鬱はいつの間にか消えていた。
「私って、結構現金な女なのかな」
そう思うものの、嬉しいものは嬉しいのだから仕方がない。
リョウからの初めての贈り物は、何よりの特効薬になったわけで。

今となればいかにもリョウらしいと思えるシンプルな紙袋に、大切なプレゼントをそっと仕舞う。
さて、明日はどんな顔をしてお礼を言おうか。
お礼を言っても『何の事だ?』、とはぐらかされるかもしれないが、恐らくその時はまたあの子供みたいな可愛い顔を拝めるはずだ。
香は顔を綻ばせ明日の朝を脳内でシュミレーションしながら、マフラーに似合う服を探す為自室へと戻ったのだった。





<あとがき>
アニメオリジナルSSで暴漢にばっさり切られちゃったあのマフラー、一体どういうふうにリョウちゃんからプレゼントされたんだろう…と思い妄想してみました。
一応、クリスマスプレゼントとして用意していたマフラーだったけど、香ちゃんが風邪をひいた事に気付いて早めにプレゼントしちゃった、という設定です。
多分リョウちゃんの事だから、普通に手渡しなんてしないだろうし(照れ臭くて)、ヘタレな感じでプレゼントというふうになりました^^;
どういう形でプレゼントされたにせよ、香ちゃんにとっては本当に嬉しいプレゼントだったに違いないでしょうね。
余談ですが、DVDBOXにこのお話が未収録だった事、未だにちょっと不満に思ってます。
これ入れて欲しかった…萌えるんですよ…ほんのりラブラブでさ…。
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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