ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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このお話はリクエストを基にしたものです。
原作以上の内容。
リクエストしてくださった愛華様、ありがとうございました。



<大切>



下腹部から腰一帯に広がる鈍痛に顔を顰めながら、香はソファに横になる。
痛みの原因は女性特有の体内の変化によるものだ。
一月かけて準備された生命を育む為の血の壁は、役割を果たさず剥がれ落ちる。
体外へと排出される不快感が、心を紅く濁らせていく。

月経は毎月定期的にくる。
日が大きく前後する事は殆どなかった。
だが今月はどういうわけか2週間程遅れた。
以前ならばさして気にも留めなかっただろうが、今は違う。
リョウと関係を持つようになってから、この事に関しては神経質になっていた。
予想していた日を1日、2日と過ぎていく頃はまだ気持ちに余裕があった。
だが4日を過ぎたあたりからある可能性が脳裏を掠め、その日を境に心に不安が広がり始める。

香は不安しか感じられない自分自身を、酷く虚しく思った。
大半は喜びを感じるのが当然であり、祝福されるべき事柄なのに。
自分が身を置く世界では、それはタブーであると言っても過言ではないのだ。
その事実を承知した上でリョウと共に生きる事を選び、それと同時に手にする事が出来たであろうありふれた幸せを、香は放棄したつもりだった。
だがそれは、完全な想いではなかった事を痛感する。

もし、新しい命が宿っていたとしたら。
関係がある以上あらゆる策を講じたとしても、命を授かる可能性はゼロにはならない。
だから香はその事態を想定し、自分がどう行動すればいいかを考え、そして決心していた。
しかし今、その決心は大きく揺らいでいる。
まだ確認したわけではない。
だがもしもの場合、自分はその決断を下す事が出来るだろうか。
もし決心を覆すのならば、もう一つの新たな覚悟を決めなければならない。

二人の存在と共にこの世界で生きていく事は、決して叶わない。
それが香の考えだった。


一連の葛藤を抱えたまま10日経った今日の早朝、下腹部に違和感を覚え、香を悩ませていた可能性は消えた。

ほっとした。落胆した。どれも何かしっくりこない。
香は今の心境をどう表現していいのか分からない。
こんな気持ちになった事がないのだから、説明のしようがなかった。
ただある種の脱力感のようなものが、体中を縛り付けている。

ベランダに目をやれば、空がオレンジ色に変わり始めている事に気付く。
そろそろリョウが帰って来る頃、夕食の支度をと思うが、どうにも体が重くて起き上がれない。
何かをする気にもならない。
ずっとこのまま横になっていたかったが、リョウの気配を感じ、無理矢理に体を起こした。



「ただいま~」
「おかえりリョウ。ちょっと待っててね、今から夕飯の」
いつもどおりを装う香の前に歩み寄ると、リョウは立ち上がろうとする彼女を片手で制した。
「メシはいいから、お前は座ってろ」
「え、でも…」
「具合悪いんだろ?顔色が良くない」
そう言ったリョウの瞳があまりに穏やかだから、香は言われるまま元の位置に座る。


「何を、悩んでた?」
横に腰を下ろしたリョウの柔らかな口調に、香の体が強張る。
「べ、別に何も」
無理に笑って誤魔化そうとしたが、真摯な瞳に見据えられ、香は口を閉ざし俯いた。
リョウは肩を引き寄せると、淡い髪に頬を寄せる。
「俺には、聞く権利があるだろう」

香は、やはりと思う。
リョウは自分の全てを熟知している。
体調の変化も、そして恐らくその内面も。
何事においても敏感な男が、最近の不自然さを疑問に思わないわけがなかった。
そしてここ数日、身体の接触を拒んでいる。
どうしてもそういう気分になれなかったのだ。
いつもなら強引にでも事に運ぼうとする男が、香の意思を受け入れた事からも、何らかの異変を感じ取っていた事が窺える。

香は想いを言葉にしようと思案したが、どうしても声にはならなかった。
胸のわだかまりを整理して話す自信がない。
流れ出した感情を制御出来ずに、きっとリョウを困らせるだろう。
それだけは、どうしても避けたかった。

香の大きな躊躇いを感じたリョウは、肩を抱く腕に力を込め、息を吐く。
漏れた溜息は、己の狡さに対して。
香の異変には気付いていた。彼女を悩ませていた事柄も。
自分にも責任があると分かっていながら話を聞くこともせず、何も出来なかった自分は、情けなく卑怯だ。

静かに謝罪の言葉を口にすると、香は控え目にそれを否定した。
予想通りの反応に苦笑し、リョウは気持ちを切り替えてにっと笑う。

「しかし、ガキを育てるってのは大変だろうな」
「え…」
「ホラ、一度依頼人のガキを預かった事があっただろ?あの時は本当に参ったぞ、俺にばっかり懐きやがって。オムツは替えなきゃならんし、夜通しあやす羽目になるし、オマケにもっこりまで叩かれるし。まーたあんな目に遭うのかと思ったぞ」
「……」

いつもと同じトーンで語られるセリフは頭に入るものの、いつまで経っても上手に処理出来ない。
互いの想いに何かしらの差異を感じる。
リョウと自分が見つめる先は、同じではないようで。

大きな目を一際丸くしている香に視線を落とすと、白い手の上に無骨なそれを重ねた。
「お前が考えてる事、俺が賛成すると思ったか?」
「…」
揺らめき出した瞳を見るのが辛いから、リョウは小さな頭を胸に引き寄せた。
「香チャンにそんな辛い思い、させるわけないでしょ」

その言葉の意味が、自分達の世界にどれ程の変化をもたらすのか容易く想像出来る。
だから、こんな事を冗談でも言えるわけがない。

香はリョウの心を量り兼ねながら、ある事を思い出していた。
それはあの時語られた、初めて知ったリョウの深層。

この世界では、己の身を守る事でさえ困難だ。
そんな殺伐とした環境で、愛する者を、まして家族を持つ事はあまりに無謀な事。
今二人で生きている事でさえ、まるで奇跡のようなのに。
今の発言は、あの時のリョウの想いとは大きく異なるものだった。

「でも、それは無理だって…」
「…以前は俺もそう思ってたさ。でも今は、なんか、ちょっと違うんだよな」
リョウは香を抱いたまま、照れたように笑う。
「何て言ったらいいか分からんが…嬉しかったんだ、想像したらさ」
「…」
「そりゃ、生易しい事じゃないって分かってるんだが…。でも、やっぱり嬉しいんだよなぁ」

香と共に生きる決断をした時、その先に待つあらゆる可能性を思案した。
その中には当然この事柄も含まれていて。
過去の自分ならば、それは危険な事項だと真っ先に排除していただろう。
だが不思議な事に、そうしようとは思わずに。
守る者が増えれば、それに伴うリスクも自ずと増える。
そう思うが、人間らしい暖かい感情が不安をはるかに凌駕していた。
己の中に、この世界では有り得ない選択肢が、当たり前のように形成されていたのだ。

それは、間違いなく香の影響。
彼女の存在が、これから先のあるべき自分を大きく変化させた。
全ての迷いを振り切ったから、香と共に生きる事を決意した。

『何がなんでも愛する者の為に生きのび、何がなんでも愛する者を守りぬく』

あの言葉は、香への、そしてその先にある未来へ向けてのもの。


リョウは恐らく泣いているであろう香を想像しながら、そっと胸から離した。

「だから、お前が考えてるような事を、俺はさせたくない」

そう言ったリョウの笑顔が、作られたものではない本物だったから、香の涙は止まらずに何も言う事が出来ない。
ただひたすらに、暖かさが、静かに胸の中に積もるだけ。


「あ…でも、まだガキはいらんな」
「え…」
「だって子供が出来たら、お前ガキにつきっきりで、どうせ俺はほったらかしだろ?」
「…は?」
「そうなったら俺、多分グレるぞ」
「…グレるって」

先程の笑顔とは真逆のつまらなそうに拗ねた顔も紛れもなく本物で、香は思わず吹き出してしまった。
まだ存在すらしていない者に対して、子供のように独占欲を剥き出しにするなんて、可笑し過ぎて笑わずにはいられない。
ついさっきまで切なくなる程の寛容な心を見せていた人物とは思えない豹変振りに、香は声を上げて笑った。

弾けるような笑顔を見るのは久しぶりで、リョウは知らず顔を綻ばせ肩の力を抜く。
「そうそう。そうやって笑ってろよ」
「え?」
目尻の涙を拭いながら笑う香の腹に、そっと手を当てる。
「もし、その時が来たら。今みたいに笑って、教えて欲しい」

再び向けられた陽だまりのような眼差しに、もう涙を見せたくない香はリョウの胸に顔を埋めた。

声を詰まらせ震える背中をそっと撫ぜながら、温もりを噛み締める。
この温もりが、自分をどこまでも強くしてくれるような、そんな気がしてならない。
あらゆる困難も蹴散らしてしまう程の、強大な力が生まれてくるのを感じる。
今はまだいない存在。
まだ見ぬその気配を感じた時、その力が更に輝き出す事を、リョウは確信していた。
まもる





<あとがき>
『生理が遅れてツワリ的なものに不安と喜びを覚えつつも僚に打ち明ける』というリクエストをいただいたのですが…正直すごく難しかったです^^;
この事は結構シビアでデリケートな問題なので、あえて今まで触れなかったのですが、この度リクエストをいただきましたのでチャレンジしてみました。
結果、ご覧のとおり迷走しまくり…。
CHの世界をリアルに考えればかなり無理のある展開ですが、ここは前向きな内容にしてみました。
賛否両論あると思うんですけど、MAYはこうであって欲しいなぁと思った次第です。
ぶっちゃけ香ちゃんが辛い思いをするのはイヤなので。
奥多摩でのリョウちゃんの告白、あれはもちろん香ちゃんに向けられたものだけど、もしかしたら未来で出会うかもしれない家族へも向けられてたのかなぁ…なんて妄想しました。
考え過ぎかもしれませんが、香ちゃんと共に生きる事を決めた時、リョウちゃんは既にそういう事を考えてたのかも…なんて勝手な解釈をしてしまいました。
リクエストしてくださった愛華様、どうもありがとうございました!
拙文ですが読んでいただければ幸いでございます…。
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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