ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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このお話はリクエストを基にしたものです。


原作以上の内容です。
リクエストしてくださったナツミ様、ありがとうございました!


<understanding>


しまったと思った時には、既に手遅れだった。
時間を巻き戻せるわけなどないから、吐いた言葉を取り消す事も不可能なわけで。

俺はアパートまでの帰り道を、なんともやりきれない気持ちで歩いた。
控え目に、小さく笑う香の顔が、脳裏に焼き付いて離れなかった。


キャッツアイの女店主であり海坊主のパートナーである美樹が今日から復帰する事を知り、俺と香は店へと足を運んだ。

結婚式という特別な日に、起こってしまった惨事。
体にも心にも深い傷を負った彼女を心配していたが、さすがは海坊主のパートナー、前を見据えたその瞳には彼女らしい逞しさと美しさが戻っていた。
今までよりも強い輝きは、海坊主との想いを改めて確認し合った結果がもたらしたものだろう。
カウンターの向こうで優しい空気を醸し出す二人は、以前と同じようで、でも明らかに変化していた。

コーヒーを飲み終えひとしきり話したところで店を出ようとしたが、その時珍しくミックと麗香が一緒に店を訪れた。
それは、俺にとって正に最悪のタイミング。
面倒な事になる前に早急に立ち去ろうとしたが、そうはさせるものかと言わんばかりに、二人は俺達を挟むように両脇に腰を降ろす。
このポジションではすぐに「ハイ、さようなら」、というのは少し不自然だ。
更に俺の気持ちを知ってか知らずか「もう一杯いかが?」、とにっこり微笑んで美樹がコーヒーを差し出すものだから、状況は悪化し帰るわけにはいかなくなった。
俺は嫌な予感が現実にならないように祈りながら、熱いコーヒーをすすった。

最初は今日から復帰した美樹の方に話題が集中していたのだが、やはり俺の考えていたとおり話の矛先は俺と香へと向き始める。
やっぱりこうなったか、とこめかみを押さえ軽く項垂れると小さく息を吐いた。

こうなるのも当然と言えば当然だった。
ここにいる連中は奥多摩での出来事を既に知っている。

ひたすら封じ続けた香への想いを言葉にして。
長い間生活を共にしながら決定的な行動を起こす事が出来ずにいた俺達が、ようやく素直になれた。
俺達をそばで見守ってきた者からすれば、歯痒くじれったい関係がようやく一つの形になろうとしているその詳細を、何としても知りたいのだろう。
その証拠に、微妙な角度から香へと話しかける麗香の瞳は好奇心に満ち溢れていた。
そのうち単刀直入に質問されるのも時間の問題だろう。

俺達の変化を知りたいと思うその気持ちは、分からないでもない。
分からなくもないが、端的に言えばそれは悪質なお節介だ。
大体プライベートな事まで話す義理などないし、そっとしておいて欲しい。
こういう雰囲気は、どうも居心地が悪過ぎる。
イライラして、落ち着かない。

俺は頬を引きつらせながら右隣を盗み見た。
案の定香は可哀相な程顔を赤くし、オロオロしている。

こうなってしまうのも当然予想はしていた。
俺たちは紆余曲折の末、ようやく一線を越えた。
だがそれは数日前の出来事で日が浅く、二人の間には未だにある種のぎこちなさが残っている。
ふとした瞬間目が合うだけで、香はほんのり頬を染め恥ずかしそうに顔を伏せたり。
そんな香の仕草に、俺までくすぐったい気持ちになったり。
いい大人が揃いも揃って、まるで青臭いガキのような恋愛をしている状態なのだ。
初心な香に麗香の際どい攻撃をかわすスキルなど、持ち合わせているはずもなかった。

何をどう答えていいか分からずに戸惑っている表情は、まるで俺だけに見せる女の部分と重なって見えて、どうも不愉快だ。
こんな香を見ていいのは、世界で俺一人だけだ。

香に触れた事で、俺の独占欲はいつの間にか肥大していたようで、苛立つ心が冷静さを奪っていく。
だから俺は言ってしまったのだ。俺達の関係の進行状況を聞かれて。
何も変わっていない、ただのパートナーだと。

つい。うっかり。思わず。
言い訳をするとしたら、そんなところだ。
だが眼前で俺を見つめる香に対しては、どんな弁解も許されない発言だった。

一瞬の沈黙の後、口を開いたのは香だった。
乾いた笑い声をあげながら俺の言葉を肯定すると、二杯目のコーヒーもそのまま一人店を後にした。
その後連中に猛烈な非難を浴びたが、それに取り合う余裕はなく、俺もすぐに店を出た。


二人がパートナーという事は、嘘ではない。
以前はその一言でも、なんとかまとめられる間柄だった。
だが今は、その言葉は俺達にとって適切なものではなくなった。
パートナーだとか、そういうありふれた枠に当て嵌まるような繋がりではない。
表現する事自体が困難で複雑な、だけど極めてシンプルな関係。

俺にとって、香は己の全てを懸ける生涯唯一の女だ。
香を望み、その存在の為だけにありたいと、純粋に思える。

胸中に渦巻く想いをありのまま見せる事が出来たなら、香はきっと今以上にたくさん笑ってくれる、心を惑わせる事もない。
そう思うのに自分でも呆れる程の不器用さが邪魔をして、香の望む言動をどうしても素直には出来ずに、結局こうして悲しませて傷付けて。

この面倒臭い性質を改善するのは、一筋縄ではいかない。
恐らく根本的な部分は、死ぬまで直らないだろう。


夕焼けに染まる橙色の空を見上げ、重い息を吐く。
気が付けば、いつの間にかアパートの前だ。
香は怒っているだろうか、それとも膝を抱え沈んでいるだろうか。
間違いなく後者だと、そう思う。
香は怒りを溜め込む性分ではない。
腹を立てれば速攻でハンマーの制裁を俺に加えるのだから。
ああして自ら引く時は、悲しみを内面に仕舞い込んだ時。
そして一人でそれと向かい合おうとする。

沈んだ想いも吐き出させてやる事が出来ない自分の不甲斐なさに、心底情けない気持ちになる。
香が自己を開放する為には、俺が素直になる事が絶対条件だ。
俺は大きく深呼吸すると、冷たいドアを開け、香がいるであろうリビングへと向かった。



リビングへと続く廊下には、食欲をそそる匂いが漂っていた。
そこでリョウはリビングからキッチンへと方向転換する。
キッチンの入り口から中の様子を窺うと、やはり香は夕食の支度をしていた。
生真面目なのは百も承知だが、こんな時まで生活のリズムを崩そうとしない姿が、無理に平静を装っているように見えてチクと胸が痛む。

暫くシンクの前に立つ後姿を見ていたが、暫しの逡巡の後中へ足を踏み入れた。
「ただいま」
やはり香はリョウの帰宅に気付いておらず、その存在に気付くなり肩を大きく揺らす。
そして一拍の間を空けて、くるりと振り返った。
「おっ、おかえりリョウ。ゴメンね先帰っちゃって。ちょっと急用を思い出しちゃったもんだから」
自棄に明るい声で捲くし立てた香は、あの時と同じ取り繕った笑顔で、リョウは俄かに表情を曇らせる。
本当は無理して笑う事さえしんどいはずなのに、弱々しくも虚勢を張ろうとする姿に、リョウは言葉を探した。

二人口を閉ざし、数秒視線を絡める。
重い沈黙に耐え切れず香は俯きそしてもう一度、ごめんと呟いた。
その謝罪は先程のそれとは全く違う意味合いを持つ為、リョウは何も言えなくなる。
それは己の取った行動に隠された真相に対しての謝罪だったから。

ドア付近で佇むリョウの足元に視線を落としたまま、香は何かに観念したように微苦笑した。
「…悲しかったの」
思いがけない香の言葉に、リョウは体を強張らせる。
「あの言葉に深い意味はないって事ぐらい、分かってたんだけどさ…」
躊躇いがちの声が段々小さくなる為、リョウはゆっくりと香との間を詰めた。
「なんだか、今までの事が全部リセットされるみたいで…また元に戻っちゃうのかなって、そう思って」
俯いたまま震える声で本心を吐露した香は、目の前に立つリョウの胸に頭を預けた。
「すごく…悲しかった」

涙ぐんだ声は儚げで、でもリョウの心に確かに届いて。
寄り添う体を、心を逃がさないように深く抱きしめた。
「リセットなんて…出来るわけないだろ」

そうだ、今更全てなかった事になど出来るはずがない。
元に戻るなんて、真っ平御免だ。

小さな頭の上に顎を乗せ、ふと息を吐く。
素直になろうと、そう思っていた。
香がこうして告白してくれたのだ、自分だけが胸の内を隠すのは卑怯だろう。
そうする事で香が笑ってくれれば、難しい事ではない。

「…お前だけだと思った?」
「…え?」
「あの時焦ってたのは…自分だけだと思ってた?」
問われた意図が見えず、香は上を見上げる。
そこにはそっぽを向いて、顔を少し赤らめて、難しい表情で眉間に深い皺を刻むリョウがいた。
それがあの時と同じ顔だった為、香はあれ、と首を傾げる。

麗香から猛攻撃を受けていたあの時。
救いを求めるようにリョウを振り返った。
一点をじっと睨み付けていたリョウは、なんとも形容し難い顔で。
困ったような、苛立っているような、不貞腐れたような、焦っているような、そんな感じだった。

香はもやもやした想いで、ある一つのあり得ない仮説を立てていた。
この男に限って、まさかそんなはずはないと思うのだが。
この滑稽な顔を見ていたら、その仮説は正しかったのかもしれないと、香は思い始める。

「もしかして…照れてたんだ」
「!」
ついさっき素直になろうと思ったばかりなのに、一言で本音を言い当てられ早くも決心が鈍ろうとしたリョウは、顔の赤を強くする。
「からかわれてるみたいで、恥ずかしかったんだ」
「~~~!」
これ以上みっともない顔を見られたくなくて、リョウは香を力任せにぎゅうと抱きしめた。

少し高い体温を感じながら、香はそっと目を閉じる。
ほっとして、嬉しくて、少し呆れて、堪らなく愛おしいから、背中に腕を滑らせた。

「私と一緒だったんだ」
「…そうだっ」
「なのに困ってる私を助けようともしないで無視してたんだ」
「う…」
「薄情なヤツ」
「…悪かった」

リョウは抱く腕に力を込めるともう一度、悪かったと囁いた。
香は腕の中で窮屈そうに首を横に振る。

「ただのパートナーだなんて、思ってない」
「…うん」
「元に戻るなんて、冗談じゃねぇ」
「私もヤダ」

クスっと笑った香が、今どんな顔をしているのか見たくて胸から離せば、少し目を潤ませて顔を綻ばせている。
笑っていても、やはり涙を見せられるのは辛いから、そっと瞼に口付けて涙を拭った。
くすぐったそうに肩を竦ませた香はいつもの自然な姿。
互いを瞳に映し、想いを再確認する。

二人はパートナーだ。
こんな厄介な男を必要とし、そしてそんな彼女だけを望んでいる、かけがえのない半身。

引き寄せられるように重なり合いながら、小さく囁く。

「お前は、俺にとってただ一人の」

言い終わる手前で香の唇に触れてしまったのは、自然とそうなってしまったのか、それとも故意か。
最後の最後で肝心な言葉を伝えられないリョウを、仕方がないと笑って許してしまう香。
この理解し難いじれったさは、永遠に変わらないのかもしれない。
それでもこうして幸せなキスを交わすのだから、突然劇的に変化する可能性もゼロではないのだ。
劇的な変化をもたらす為には、リョウの努力が必要不可欠だ。
ごめんね





『キャッツでミックと麗香に二人の近況を聞かれ照れたリョウは香を傷つけてしまう。傷ついた香は泣きながらアパートへ帰る。リョウはその後を追いかけ香に謝り、最後はラブラブ』というリクエストをくださったナツミ様。
なんかいろんなところをカットしたような内容になってしまいまして…。
ラブラブなのも最後の一瞬だけだし、いろいろスミマセン><
今までに書いた事のないシチュエーションだったので、とても新鮮でした。
リクエストしてくださって、どうもありがとうございました。
拙文ですが、読んでいただければ幸いでございます…。
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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