ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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原作程度のお話です。
先日UPしました『attraction』の続きです。
なので、そちらを読まれてからの閲覧をお勧めします。
<素直>


ドアと睨み合いを続ける事数分、香は大きく深呼吸して心を静める。

そうだ、難しく考える必要はないのだ。
いつもと同じように大声で叩き起こせばいいだけ。
そうすればきっと心の動揺も悟られないはずだ。

ドアノブを握り締めてドアを開けようとした香は、ふと考えた。

「…いつもどうやって起こしてたっけ?」

普段の自分の日課さえもろくに思い出せない程の事態に焦った香だったが、元来ウジウジ悩む性分ではない彼女は、なるようになれと半分自棄になり勢いよくドアを開けた。


「リョウっ!いつまで寝てっ……」

香の口から飛び出したいつもより若干大きめの怒鳴り声は、尻すぼみに小さくなり途切れた。
喉は固まり、香自身も石のように硬直している。
その理由は極めて簡単、リョウが起きていたからだ。
しかも、香が一番見たくないと思っていた姿で。
あれ?最近こんなやつ描いたな…

見開かれた瞳に映るのは、トランクスを穿いただけの格好のリョウ。
ほんのり髪が濡れているところを見ると、どうやらシャワーでも浴びた後のようだ。
首からタオルを下げてはいるが、その隙間から見える厚い胸板が石化した香の心拍数を急上昇させた。

「なんだぁ?いきなり怒鳴り込んで来たかと思えば、急に黙りこくって」

まだ雫を滴らせる髪を拭きながら歩み寄るリョウに、香は反射的に後ずさったが、閉めてしまったドアに阻まれ二人の距離は段々縮まっていく。

「おっ、起きてたんだっ?」

このままではマズイ、と香はやっとの思いで声を発した。
妙に上擦った香の声に、リョウの歩みは止まる。

「ああ、なんか今朝は早く目が覚めてな」

シャワー浴びてスッキリした、とリョウはベッドの端へ腰掛けた。

「あっ、朝ご飯出来てるからっ、早く来なさいよっ!」
「おう」
香は用件だけを手短に告げると、逃げるように部屋を出て行った。




「…どうしたんだ、アイツ」

不自然に慌てていた香に首を傾げながら、リョウはそのまま後ろへ寝転んだ。


まともに眠れなかった。
深い影に一晩中囚われ続けた。

昨晩のような事がある度に、必ず現れる黒い霧。
この霧が香までもを黒く染めてしまう前に、早く手放すべきだという想いはずっと心の中にある。
だが現状を考えると、実質的にそれはもう難しい。
この世界において、香がシティーハンターでありリョウのパートナーであるという事は浸透してしまっている。
今更表の世界へ帰したところで、危険に晒される事に変わりはない。
むしろ、自分の下へ置いておいたほうが安全と言えるかもしれない。

こうして一旦納まった一連の思考は、また元へと戻ってしまう。
いい加減この繰り返しに疲れた、というのが正直な気持ちだ。
ああでもない、こうでもない、と理屈を付けて廻らせる想いは、風に飛ばされた風船のように頼りなくふわふわと宙を彷徨い、見えなくなる。

リョウは全ての事において長期に亘り思案する事はなく、正しい方向へと素早く決断する人間だ。
この世界では『迷う』という行為は愚行であり、死に直結している。
相手に付け入る隙を与えてしまうだけだ。

だが、香の事となると話は別だった。
シンプルに考えようとすればする程深みに嵌り、抜け出せなくなる。

単純な結論を出せない理由は本人も充分分かっていた。
あの笑顔を、細い手を、離したくないと叫ぶ本能が、リョウを迷わせ決断力を鈍らせている。

リョウは驚かずにはいられなかった。
こんなにも自分は一人の人間の事で、心を悩ませる性質だったのかと。
こんなにも自分を苦しめる存在はいなかった。

「…それだけ本気…って事なんだろうなぁ」

勝手に口をついて出た声に、リョウは更に驚く。
知らず本音を漏らすようになってしまっては、相当の重症、というよりも手遅れだ。

またしても深い回路に潜ろうとしたその時、腹の虫が鳴った。
複雑に絡まる心とは違い人一倍大きく素直な体は、早くエネルギーを補給しろと催促している。
リョウは少し重く感じる体を起こすと、ふうと息を吐いた。

「俺も素直になれりゃいいんだろうけどなぁ…」

そう一人ごちると、暖かい食事が用意されているダイニングへと向かった。




二人で朝食を摂るなんて、あまりない事だ。
香は早朝から動き回り、リョウは昼前まで惰眠を貪る。
生活のリズムには大きなズレがあるのだ。

香は、新聞を読みながら呆れる程の早さで目の前のものを平らげる男をチラリと見た。
もうさっきのように動揺はしないものの、普段は意識する事のない大きな手や伏せられた目にどうしても目が留まる。


「…なぁ」
「えっっ?」

新聞に向けられた視線はそのままで突然声をかけられ、香は思わず背筋を伸ばした。

「…足、大丈夫か?」
視線を紙面から香へと移したリョウは問うた。
「え?あ、ああ、うん、大丈夫。全然平気!」
「……ウソつけ」
「うっ、ウソじゃないわよっ」
「お前さっき俺の部屋に来た時、少し足引きずってたろ?」
「う…」
「…やっぱりなぁ。俺の洞察力を侮っちゃいかんよ」
「…でも少し痛むだけだもん。本当に大丈夫」
「そうか。まぁ、でも暫くは無理するなよ」

そう呟いたリョウの小さな笑みに、香の鼓動がトクンと跳ねた。
折角納まりかけていたくすぐったい衝動が、再び動き始めるのではないかと思うと、食事がなかなか進まない香だった。



「そういやさ、俺が昨日言った事忘れてないよな?」
食後のコーヒーを飲みながら、思い出したようにリョウは声をかけた。
「え、昨日?」
「今日は依頼料が入るから、夕飯は奮発してくれって言ったろ?」
「…あ、ああ、思い出した!」

昨晩の事といえば、自分のミスとリョウの事しか思い浮かばずその事をすっかり忘れていたが、確かにそんな事を言っていた。

「OK、任せといて。で、何が食べたいの?」
「そりゃやっぱり肉だろ」
「肉って…漠然とし過ぎねぇ。もう少し具体的に言ってよ」
「んな事言ったって、考えんの面倒くせぇよ」
「……なにぃ?!」

リョウの何気ない一言が、先程まで恋する乙女のようだった香をいつもの彼女へと戻してしまった。
毎日の仕事を『面倒くさい』の一言で表現されてしまっては、香の立場はあったものではない。
ふつふつと湧き上がる怒りは一気に沸点に達した。

「その面倒くさい事を、こっちは毎日やってるんだぞ!!」

いつの間にか出現したハンマーを片手に睨む香に、リョウは慌てた。

「わっ、分かったっ!俺が悪かった!!俺も一緒に行って考えるからハンマーは仕舞えっ!!」
「こんのヤロ~……ん?…一緒に行く?」

ハンマーをリョウの頭上に持ち上げようとしていた香は、そのセリフに引っ掛かり動きを止めた。

「行くだろ?買い物」
「う、うん、行くけど」
「だから、俺も一緒に行って考えるっつってんの」
「…え?」

リョウが買い物に付き合うなんて滅多にない。香から言い出した時ぐらいだ。
だが今は、リョウから行くと言ったのだ。
香は自分の耳を疑った。
信じられないといった顔で、香はリョウを見つめる。

「ホ、ホントに一緒に行ってくれるの?」
「ああ、足の怪我もあるしな」
「ホントにホントっ?!」
「…しつこいぞ、お前」

自分の発言を何度も確認され、リョウは何だか気恥ずかしくなり、少し顔を赤らめそっぽを向いた。

「…ありがと、リョウ」

ハンマーを納めた香は、怒りの表情から一転満面の笑みをリョウに向けた。



足の怪我を心配しただけ。
一緒に買い物に行くと言っただけなのに。
たったそれだけの事で幸せそうに微笑む香を、愛おしいと素直に思わずにはいられなかった。

もしも、その想いを口にした時、香は一体どんな顔をするのだろう。
リョウは想像すら出来ない。
自分の想いを伝える明確なビジョンがないから。

だが、暗い闇を払い除け、その先に広がる世界を見る時が来たら、その時は自分の横に香がいて欲しいと思う。

ずっと心を惹き付けて止まないその笑顔を見せて欲しいと、そう思った。

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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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