ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
原作程度のお話。
香ちゃん視点の内容です。
いつもの如く突っ込みどころ満載ですが、よろしければどうぞ…。


<attraction>


勢いよく音を立てて蒸気を噴き出しているヤカンの火を止める事もせず、香は朝の光を受けて鈍く光るシンクを見つめていた。
お湯を沸かしていた目的も忘れ、その頭の中を占めるものは昨日のリョウの姿だった。


香は昨日、囮役を志願した。

ストーカーから狙われているのだという女性の依頼だった。
青白い顔で助けを求める彼女の姿に、同じ女性として強い怒りが込み上げる。
自分も何か力になりたい、なんとかしてあげたい。
香はその思いをリョウに伝え、策を提案したのだ。
だがリョウは素直に賛成はしなかった。
思い詰めた時の香の無鉄砲さは、リョウが一番分かっている。
それが原因で、何度気を揉んだか知れない。
だがどういう訳か犯人は、こちらの存在を警戒するかのように長い間姿を現さない為、どうしたものかと思案していたのも事実で。

リョウは腕組みして一時考える。
チラリと視線を落とせば、必死の形相で自分が首を縦に振るのを固唾を飲んで見守る香と目が合った。
リョウは一つ溜息をつくと、仕方がない、と香の髪をかき混ぜた。

「…じゃ、逞しい相棒に頑張ってもらいましょうかね」

次の瞬間、花が咲いたような笑顔で大きく頷いた香に、複雑な思いで苦笑するリョウだった。




作戦は昨夜決行された。
作戦は功を奏し、今まで存在しないのではないかと思う程何の動きも見せなかった犯人が現れる。
人気のない公園を歩く変装した香を依頼人だと勘違いした男は、香の背後に近づきそっと後をつけた。

『俺が合図したら、お前は公園の出口までダッシュしろ。いいな?』

暗闇に潜む気配を探りながら、いつになく神妙な面持ちで言ったリョウの言葉を思い出す。
囮役を自分で言い出したものの、香の心に恐怖がないわけではない。
ハイヒールの音と心音が耳に大きく響く。

大丈夫、リョウがついてる。

その思いと持ち前の正義感が、香の足を動かしていた。


遠くでクーパーのクラクションが鳴った。

香はその音と同時に駆け出した。
背後の男も慌てて香を追う。
男の足音が近づいてきた事に気付いた香は、更に足の回転を速めた。

あと少しで出口だ!

その時、張り詰めていた心に少し油断が出たのか、出口まであと10mというところで、香はアスファルトの窪みにヒールを引っ掛け派手に転んでしまった。

止まってしまった香と猛追する男の距離が縮まるのは一瞬だった。
香は迫る影にぎゅっと目を瞑った。
しかし、接近したはずの男の気配を感じない事に、香はそっと目を開いた。
その目に飛び込んできたのは、広い背中と前を見据える鋭い眼。
仕事中だ!
眼前に現れたリョウが犯人を取り押さえるまで、あっという間の出来事だった。
だが香の目には、一つ一つの動作がまるでスローモーションのように映っていた。
強力な引力に引っ張られたように、その背中から視線を剥がす事が出来なかった。



「…ったく、最後の最後でヘマしやがって」
後始末を冴子に頼んだリョウは、クーパーで待つ香に缶コーヒーを差し出した。
「…ゴメン」
香は缶コーヒーを受け取ると、力なく呟いた。

「ま、依頼は片付いたんだし明日には依頼料振り込むって言ってたから、明日の夕飯はケチケチしないで豪華に頼む!」
リョウは俯いたままの香を覗き込むと、柔かい両の頬を摘んだ。
「!!」
「そんなどよーんとした顔してると、ブサイクになるぞ」
頬を摘む手を小さな頭の上にポンと乗せると、リョウはあの時と同じ複雑な笑みを浮かべ、自分の胸に引き寄せた。

香は溢れそうになる涙を必死で堪えた。
お疲れさん、と囁く声に混じる想いに気付いたから。
自分の身を誰よりも心配していたのだと、気付いたから。



あれからアパートに戻り、リョウから転んだ時に出来た傷を手当てしてもらった香は、自室に戻ってもあまり眠れなかった。
依頼も片付き、スッキリした気持ちで休めるはずなのに。

眠れない理由は二つだ。
一つはミスを犯してしまった事。
そしてもう一つは、リョウの事だ。

転んだ自分を背に庇うリョウの姿が頭から離れない。
何もかも委ねてしまいたくなる強さに、心がざわめく。

分かっている、あの時のリョウの姿勢は自分だけに向けられるものではない。
あれが依頼人であっても、リョウは同じように振舞ったはずだ。

そう頭では分かっているのに。

あの一瞬だけ香は全てを忘れ、リョウだけに意識が向いていた。
傷の痛みも、迫っていた危険も、犯人に対する怒りも、頭の中から消えていた。
香の中を支配していたのは、あの状況には相応しくない、かけ離れた想い。
あの大きな存在に、心を奪われていた。



カタカタとヤカンの蓋が鳴る音に我に返った香は、ようやくガスの火を止めた。
香は沸かした湯もそのまま、テーブルに着くと頬杖をついて溜息を零した。

仕方ない事なのかな、諦めのような感情が沸く。

依頼人がリョウに好意を寄せる事は、珍しくない。
そして全幅の信頼を寄せてリョウを見つめる彼女達に、苛立ちにも似た感情を抱く事も然り。
だが昨夜初めて彼女達の立場に立ってみて、妙に納得した。
惹かれるのも無理はないと。
無条件に彼女達の心を惹き付けるものを、あの男は持っているのだ。
そして自分も同じように、リョウに惹かれている。

「惚れちゃうのも、無理ないか…」

自然と漏れた言葉は、自分に向けてのものなのか、彼女達に向けたものなのか。

香は苦笑すると、イスから立ち上がり考える。
昨晩からずっと香の脳内を独占している、諸悪の根源とも言える男を起こさなくてはならないのだが。
こんな気持ちでは顔を見た途端、激しく動揺するのは明らかだった。
それに朝のリョウは、初心な香ですらクラリとする程の濃い空気を纏っているのだ。
妙に勘の鋭いあの男は、何かを感じ取ってしまうかもしれない。

香は大きく深呼吸すると、よし、と気合を入れる。

「…お願いだから、服ぐらい着といてよ」
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://qazzz.blog31.fc2.com/tb.php/227-7bdde0b8

MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

名前:
メール:
件名:
本文:

この人と友達になる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。