ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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アニメ『さらばハードボイルドシティー』の後日談的なお話です。
なのでご存じない方は少し分かりづらいかも知れません。
シリアス路線でいこうと思ったら、段々ギャグ路線へ…。
いろいろと突っ込みどころ満載ですが、よろしければどうぞ…。
<唇の代償>


「参ったね、こりゃ…」

ベランダで一服していた俺は、ぼやかずにはいられなかった。


香から『外出禁止令』をくらってしまった。
左手首とベランダの手摺は頑丈な手錠で繋がれ、身動きが取れない。
こんな事をしたのは当然香だ。
なぜ香が不可解かつ手荒な暴挙に出たのかというと、それにはちゃんとした理由がある。

俺が連日連夜派手に飲み歩いた結果、あり得ない程のツケをこさえたからだ。
それを知った香は大激怒し、俺に監禁紛いの処置を取ったのだった。

だが俺は、好きで馬鹿みたいに飲み歩いていたわけじゃない。
そうせざるを得なかった、という言い方のほうがしっくりくる。

俺は、どういう形であれ香から距離を取る必要があった。
そうでもしないと、俺はあの日の事を否が応でも思い出してしまうから。
思い出してしまえば、以前のように振舞う自信がなかったから。



あの一件の翌日、目覚めた香は幸いな事に元の記憶を取り戻していた。
そして、操られていた時の記憶が一切残っていなかった事が、なにより俺を安堵させた。
その事は嬉しい誤算だった。
仮に香が元に戻ったとしても、『セイラ』として行動していた時の記憶が残っていたとしたら、心に大きな傷を負っていただろう。
操られていたとはいえ、東京を壊滅させようとしていたのだ。
そして、自らの手で俺に銃口を向け引き金を引いたのだ。
その事実が香の中に有れば、きっと自分を限界まで責めただろう。

香には、空白の数日間の事、そして俺の脚の傷の事を上手く誤魔化して説明した。
良くも悪くも、物事をあまり深く考えない性格が吉と出て、香は俺の話をすんなり受け入れた。

この一件はこれで一応の解決を見、俺はホッと胸を撫で下ろした。
だが一息付いたのも一瞬、俺には新たな悩みの種が生まれていた。



あれはあの日から数日経った日の事だ。
何気ない日常の一コマだったはずだ。
今となってははっきりと憶えていないが、『ねぇ』とか『ちょっと』とか、そういった類の言葉と共に肩を叩かれた俺は、何気に振り返った。
目に映るのはいつもの香だ。これといって何の変化もない。
なのにアイツの顔を見た途端、普段は何重にも設置してある理性のフィルターを一気に通り抜け、俺の意識は熱となり一点に集中し、明確な反応を示した。

「ぅげっ!!」
「げ?」

俺はあり得ない自分の体の変化に驚愕しながらも、その事を香に悟られないように、いぶかしむアイツをその場に残して脱兎の如く逃げた。

金メダル級のスピードで自室へ飛び込んだ俺は、大きく息を乱しながら未だ意思表示し続ける箇所を見下ろした。

「…やっべぇぞ」

一言呟いて閉じた瞼の裏に蘇る映像に、俺は盛大に溜息をついた。



破壊へのカウントダウンは既に始まっているというのに、あの時の俺の心は静かで穏やかだった。
残り僅かとなった時限装置を止める確かな手立てなどなく、全てが跡形も無く消えてしまうかもしれない崖っぷちの状況だったはずなのに。

倒れこんできたアイツを胸に抱きとめた俺は、知らず微笑んでいた。
自分に戻ってきた温もりが、素直に嬉しかった。
こうしてこのまま二人終われるのなら、それでもいいと思えた。
それが本望とさえも。
だから再び香が向けた銃口が、俺の心臓に定められても何も思わなかった。恐怖すらない。


『お前が元に戻らなければ、生きていてもしょうがない』


あの時口にした言葉は、俺の本心だろう。
目の前の冷たい目をした女は香だ。
どんな格好をしようが、見間違えたりはしない。
だがその体に宿る魂は香のものではなく、色も温度もない紛い物だ。
体と精神が一致しなければ、それは香ではない。絶対に。
アイツの心が元に戻らなければ、その瞳孔に優しさは失われ、穏やかな笑みを向ける事もないのだ。
香が香でないのならば、生きていく価値などないと、そう思った。

やがて俺を見据える冷めた瞳が揺らめき出し、俺は一つの望みを見出す。
何の情も映さない平らな顔が、次第に色付き始めた事に気付いた俺はもう、全ての迷いを断ち切っていた。


『お前を泣かす男が、今はお前を…』


その先は言葉にならず、態度で示した。
俺が一番避けてきた、香への行為。
唇から伝播する戸惑いも無視して流れ出す想いを注ぎ込むように、俺は深く潜り込んだのだった。


あれから当時の事が鮮明に蘇る度、条件反射のように分かり易い反応を示す事態にほとほと困り果てた俺は、少しでも香と接点を持たないように、毎夜出かけていたのだ。
そんな事を続けても何の解決にもならない事は、当の本人がよく分かってはいるのだが。



苦い煙を大きく吸い込むと、溜息と共にそれを吐き出した。

あの時、思うままに香に口付けた事を軽く後悔していた。
なまじ中途半端に触れ合ってしまった結果がこれだ。
中学生のガキよろしく悶々と悩むぐらいなら、いっそ何も知らない方がまだマシだ。
だがあの柔かさを直に感じた俺の脳には、香の唇がしっかりとインプットされている。
今更削除するなんて不可能だ。

「だってよ…したかったんだから、しょうがねぇだろ…」

誰に言うでもなく独り言が漏れる。

そういえばよくよく思い出すと、あのキスには意外な点がある。
唇に触れ一瞬強張った体は、すぐに素直になったのだ。
突然の行為だったのだ、激しく拒まれてもいいはずなのに。
俺に身を委ね、静かに銃をおろしたのだ。
その姿勢が、俺の心を更に煽ったともいえる。
もしあの時の香が本当の香だったとして、あのキスを素直に受け入れたのだとしたら…。

「ひょっとして、強気に攻めたら案外素直に応じたりして…。いやでも、さすがにそれはちょっと出来んよな…」
「なーにブツブツ言ってんのよ」
「うおっ!!」

香のあれこれを考えまくっていた俺は、本人のリアルな声に派手に驚いた。


「ちゃんとおりこうさんにしてたみたいね」
「…おりこうさんって、俺は犬じゃねぇ…」

自分の言いつけを守っていた事に上機嫌な声を上げる香に目をやった俺は、激しく後悔した。

お風呂あがり♪

薄い水色のTシャツにハーフパンツを身に着けた、色気もクソもない風呂上りの姿。
白い肌はほんのり色づき、淡い石鹸の香りを漂わせている。
以前の俺ならこんな香を見ても、強靭な理性で己をセーブ出来たのだが、いまや脆くなってしまったそれでは以前のようにはいかない。
今の俺にはこんな香の姿でさえ破壊力抜群、理性を打ち砕くには充分だった。

「さてと、手錠を外しましょうかね」

冷や汗を流す俺とは対照的に、今にも鼻歌を歌い出しそうな香は俺にピタッと近づいた。
途端、俺の思考回路はショート寸前になる。
手錠を外そうとした香の手が、俺の手に触れた。

そこで試合終了のゴングが鳴った。
俺の貧弱な理性は負け、勝ち残ったのは極めて危険な本能。

「香」

俺は香の手を掴むと、何の疑心も持たない澄んだ瞳を見つめた。

「俺と今夜…」
「…今夜?」

俺の言葉を反復しながら、香は首を傾げた。

「もっこり一発…どう?」

香は一瞬目を見開いた後、顔を赤く染め俯くと、俺の手をぎゅっと握り返した。
俺は堪らず香を抱き寄せようとした。

だが、それは香の不気味な笑い声に阻まれる。
背中を震わせながら顔を上げた香は、ニヤリと笑った。

「同じ手で私を騙そうとするなんて、甘いわよリョウ」
「…あ?」

香の急変ぶりと言葉の意味が分からず、俺は眉間に深い皺を刻む。

「アンタ前にも同じような事言って私を馬鹿にしたじゃない!」
「へ?………ああ」

俺は暫く考えた後、確かに同じような手口で香を口説くようなマネをした事を思い出した。
あの時の発言は、半分の冗談と半分の本音から作られていた。
だが今は完全に本気の発言、嘘偽りない本心だ。

「また私を騙してその隙に出かけようって魂胆でしょ?その手には乗らないってのよ!!」
「ちょっと待てっ!違うって、俺は…」
「うっさい、このろくでなし!大体なんでデートもまともにした事ない男ともっこりしなくちゃなんないのよっ!!」
「ぐえええっ!!」

香の尤もな怒りと共に振り降ろされたハンマーに、俺は哀れ潰された。
なめんなよ、と一言吐き捨て床を鳴らしながらリビングを出て行く香を引き止める術はなく、ハンマーから這い出た俺はその場に座り込む。

香のハンマーで冷静になると、こうなるのも当然だと頭をガシガシと掻いた。
大体、今の俺と香の心には温度差があった。
それに急に掌を返したように真面目に迫ったところで、馬鹿正直にそれを信用するほど軽い女ではない事は、俺が一番よく知っている。
香の言うとおり、デートはおろかまともに手を繋いだ事もない、互いへの想いを持て余すだけの関係。

「熱~いキスはしたんだけどなぁ…」

一度だけの接触も、相手の記憶に残っていなければ何もなかったのと同じ事。

「やっぱりあの時みたいに力技でいった方が、八方丸く納まるのかもしれんな…」

しかし強気な考えもすぐに小さくなり霧散する。
いつの間にか大切に暖めてきた存在に、容易く触れる事はやはり躊躇われる。
あの時のように、全てを投げ捨て曝け出さなければ、到底無理なのだ。

「面倒くせぇけど、アイツの言うとおりデートから始めるしかないのかぁ…。ん……?俺と香がデート…ねぇ」

それは天変地異の前触れのような、奇妙な光景にも思えて。
二人並んで仲睦まじく街を歩く姿を想像した俺は、妙にむず痒くなり、ありえねぇ、と大きく頭を振った。
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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