ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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原作程度、後期のお話です。
少し切ないです…。<dead end>


頬を掠める秋の風と擽るような香の笑い声が、少し火照った体に心地よかった。


『たまには一緒にのもうよ』

夕食後、出かけようかと迷っていたところに、冴子から貰ったのだというワインを片手に香はリョウを誘った。


リョウは普段家でのむ事は少ない。最近は特に。
酒のせいで判断を誤る程、バカじゃない。
だが、今にも心の均衡が崩れそうな状況で、正気を保つ自信もなかった。

リョウは暫し逡巡したが、香からの誘いを無下にする事も出来ず、そのワインを受け取った。


香の他愛の無い話を聞きながらのむのも悪くない、少し甘めのワインを口にしながら、リョウはいつもより大きな笑顔で話す香を見つめ、そう思った。



「風が涼しくなると、秋って感じがしない?」
「そうだなぁ」

酔っているのか少し舌足らずな口調でしゃべる香に、ベランダの手摺に背中を預けているリョウは小さく笑った。

「ワイン…おいしかったね」
「確かにな。お前調子に乗ってのんでたから、明日の朝ヤバイんじゃないのかぁ?」
「大丈夫!あれぐらいで二日酔いになったりしないわよ」

そう言いながら赤い舌を出す仕草は子供っぽいのに、首までほんのり赤く染まった肌や、まどろんだ瞳はいつもの香とは違い妙に色っぽくて、リョウは不自然に視線を逸らした。

「そうだ、今度冴子さんに会ったらリョウからもお礼言っといてね」
「あ?なんで」
「なんでって、いっつもいろんな物貰ってばっかりで申し訳ないじゃない」
「やだね。俺はアイツのせいで何度も酷い目に遭ってんだぞ。ワインぐらいで礼なんか言うかってんだ!」
「…アンタって、ホント子供みたいよね。実際はオジサンだけど…」
「…なんだと?」
「聞こえなかった?オジサンって言ったのよ♪」

聞き捨てならない単語に、リョウは敏感に反応し反撃に転じようとしたが、軽口を叩いた香の笑顔に不覚にも目を奪われ言葉を詰まらせた。


「…そういえばさ……」

激しい夕立が溜まったガスを流してくれたお陰か、この街では滅多にお目にかかれない星空を見つめながら小さく呟いた香に、リョウは目を向けた。

「冴子さんて…あれからずっと…独りなのかな」
「…さあな」

曖昧な疑問に一言答えると、リョウはタバコに火を点けた。

「プライベートな事は知らんからなぁ。まぁ、親父さんの薦める見合いを断ってはいるみたいだけどな…」
「そっか…」


いつも凛とした姿で真っ直ぐに前を見つめる姿に、同じ女性として嫉妬してしまう程の憧れを抱いてしまう人。
大きな優しさと、強さを持つ人。

だが同じ女性だからこそ、その心の中に潜む影に気付く。
彼女の中には、秀幸の姿が大きく存在している。

香は、二人の関係をよく知らない。
しかし、互いに惹かれ合っていたと彼女から聞いた事があった。

二人の想いを何らかの形で一つにする事が出来たなら、彼女は少しずつ前へ進めたのかもしれない。
だが、それを成し遂げる術はもうないのだ。
秀幸はもう存在しないのだから。

一つの方向に向かい始めていた道は途切れ、二人の心も分散した。
彼女の想いは留まり続け、行き場をなくし彷徨う。
どんな場所にも定着する事が出来ずに。

一人の人間を愛し続ける事は、素晴らしい事だ。
だが、その心を受け止めてくれる者がいないのなら、それは間違った事なのかもしれない。
これから先の世界を見出す事もせずに、心を雁字搦めにするだけ。
それは悲しい、あまりにも悲しい事だ。


香は、隣で静かに紫煙をくゆらす男をそっと見つめた。

どういう関係であれ、自分はリョウの傍にいる。
この世に生きて、同じ時間を共有している。

それだけで充分ではないか。

もういなくなってしまった男を今も想い続ける彼女の事を考えると、今の己の立場を飲み込もうと思うのに。
手に触れそうな距離にいるからこそ、それを拒む想いが生まれる。
傍にいれば、見えなくてよかったものが見えてくる。
知らなくてよかった事に、気付かされる。

ずっと、恋に恋をしていられたらよかったのに。
心の底に湧き出した、醜く厭らしい感情に気付いてしまった今では、傍にいるだけでいいと思う事が出来ない。

もっと近づいて、心に、体に、触れて欲しい。
その心も、体も、与えて欲しい。
手を伸ばして、そう叫びたくなる。

香も彼女と同じだ。
この場所から少しも前に進めず、深い想いは大きな渦を作り、同じ所を何度も回るだけ。
想いは通じ合う事はなく、ずっと独りだ。



「なんだか…悲しいな……」

小さく漏れた声が、少し冷えた風に乗りリョウへ届いた。

「冴子さん、ずっと独りだなんて…そんなの…寂しいよ」
「…酔ってるのか、お前?」

先程の明るい雰囲気をなくし俯いて呟く香に、リョウは眉を顰めた。

「わかんない…そうね、少し酔ってるかも…」

ふふ、と力なく笑った香は、リョウに背中を向けた。


「リョウは……寂しくない?」
「……」


香の真意が見えず、リョウは小さい背中を見つめた。



「私は…寂しい。ずっと……独りだから」
「……」

「寂しいよ…リョウ」
寂しいから
いつものように、その場を誤魔化す事が出来なかった。

のみ過ぎたのだと茶化す事が出来なったのは、自分に向けられた言葉が酔いに任せて放たれたものではないと分かったから。
ゆっくり振り向いた香の顔が、泣いているように見えたから。


近くで鳴ったクラクションの音をきっかけに、香の表情は通常のものに変わっていた。


「リョウの言うとおり、酔ってるみたい。…もう寝るね」
すれ違い様おやすみ、と一言残して、香はその場を去った。


リョウは、小さく舌打ちするとまだ少し残るタバコの火を消した。

無性に腹が立つ。
怒りにも似た感情は、自分に向けてのものだ。

卑怯者、といつだったか言われた事がある。
言い逃れの出来ないその言葉を、リョウはただ黙って肯定するだけだった。

確かにその通りだった。反論する余地もない。
香の想いを知りながら、ただ見るだけで受け取る事をしない。
こんな事を続ければ、自分に向けられる光はやがて消えてしまうかもしれない。
その心を握り潰してしまうかもしれないのに。
見返りを一切求めない直向な想いに触れようとしない自分は、卑怯者以外の何者でもない。

香が垣間見せた本心に、何も言う事が出来なかった情けない自分に笑う事も出来ない。


寂しいのなら、抱きしめてやればいい。
思うままに、攫って奪ってしまえばいい。

それは難しい事じゃない。簡単で単純な事だ。
そう思うのに、心は薄い壁にぶつかり行き止まる。


リョウは天を仰ぐと、すれ違った香の肩を掴もうとして止まってしまった掌をただじっと見つめた。
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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