ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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『もう一度』後半です。
前半同様、切ない内容です。

<もう一度(2)>



夕暮れに染まるベンチに、香は一人座っていた。
横には食材が大量に入った袋が3つ置いてある。
荷物を抱え歩いていた香だったが、さすがに疲れて公園で少し休んでいたのだ。

あの日から心は疲弊しきって、体力までも徐々に失われていたのか、体がひどく重かった。

陽が傾くにつれ子供達の声も少なくなり、やがて静かになった公園は思いの他寂しくて、香の表情が更に曇る。


ふ、と小さな溜息を漏らし視線を下に向けると、長い影が視界に入ってきた。

「…何やってんだよ、こんな所で」

その声に顔を上げると、目の前にはリョウが立っていた。
西日に目を細めて、香はその大きな体を見上げた。

「買い物して帰る途中だったんだけど、ちょっと疲れちゃって」
ちょっと休憩、と控えめに笑うその顔はやはりリョウの望んだものではなく、複雑な思いで見つめた。

「お前、こりゃいくら何でも買いすぎだろ。ちょっとは考えて買えよな」
「何言ってんのよ、リョウの食べる量が半端じゃないから、こんなにたくさん買うんじゃない」

上目で反論する香の頭を、宥めるようにポンと叩いた。
「わかったわかった。アパートまで俺が持ってやるからそう怒るなって。さ、帰るぞ」

ベンチに置かれた荷物を持とうとするリョウの横顔を見た香は、何かに気が付いた。

少しだけ乱れた前髪、額に浮かぶ小さな汗。
そして、ここへ来た時かけられた声が、息で微かに途切れていた事。


「もしかして…私を探してたの…?」

香の小さな声に、荷物を手に持ち帰ろうとしていたリョウの背中が微かに揺れた。

「…んなわけないだろ。偶然ここを通りかかっただけだ」

そう言ったリョウの耳が少し赤いのは、夕陽のせいだけではない。


ほら帰るぞ、と香の方を振り返ったリョウは驚いた。
香は立ち竦んだまま俯き、微かに肩を震わせていた。


ずっと泣けなかった。
寂しくて、苦しくて、辛くて。
狂うほど泣き叫べば、この重い気持ちも軽くなるかもしれない。
そう思っても、泣けなかったのに。
こうして、一緒に帰ろうと言ってくれる人がいる。
そう思った途端、凍っていた心が溶け出し、涙に変わろうとしていた。

だが、香はそれを必死で堪えた。

リョウの前では泣けない。

兄の死に措いて、誰よりも責任を感じているのは他でもないリョウだった。
そんな素振りは普段見せないが、香にはリョウの思いが充分過ぎるほど分かっていた。
自分の涙で、リョウを責めるような事はしたくなかった。


香は偽りの笑顔を貼り付け顔を上げようとしたが、それはリョウによって阻まれた。
リョウはその小さな頭を、胸に引き寄せていた。

「ちょっと…」
離して、と目の前の胸を押し返そうとしたが、リョウは何も言わず香を離そうとしない。


「何もかも…」
ひどく落ち着いたリョウの声に、香は突っ撥ねていた手を止めた。

「全部、我慢しようとするな」

頭に置かれた手が、そっと髪を撫でる。

「お前が泣く時は…俺の胸ぐらい、いつだって貸してやれるから」
少しの切なさを含んだ暖かい声に、香は胸が苦しくなった。

「それぐらいの事は…させてくれ」


溶け出した心はもう止まらず、涙となり溢れ出した。

堰を切ったように泣き出した香の涙を胸で感じながら、リョウは震える背中をそっと包み込んだ。

辛い思いをしながらも、己の感情を押し殺して自分に気を遣っていた事をリョウは知っていた。
本当は、罵られてもいいはずの自分の為に。


今はこうして、胸を貸してやる事しか出来ない。
この涙が止まっても、香の心が癒える事はないだろう。

でもいつか、もう一度。

もう一度だけ、あの笑顔を向けてくれる日が来るまで、香の傍にいよう。


夜に変わろうとする空を見つめながら、リョウは胸の中の温もりを抱きしめていた。
いつか笑える日まで
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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