ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

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原作程度のお話です。
初期から中期頃の二人…かなぁ。
リョウちゃんが香ちゃんの事をなんとな~く考えてます。


<予感>



人間突如として予想だにしない衝撃に襲われると、体が動かなくなるのだという事を、香は今身をもって体験していた。

目の前のブラウン管に映るのは、一面の肌色。
そして耳に飛び込んでくる音声に、香はまるで電池の切れたおもちゃのように固まっていた。



いつもの日課を終えアパートに戻ったリョウは、自室から感じる香の気配に眉を顰めた。
特別な用がない限りリョウの部屋に入ったりする事はしないのに、自分が不在の間一体なぜそこにいるのか分からない。

疑問に思いながらドアノブに手をかけたリョウは、中から微かに聞こえる音に一瞬驚きその疑問を更に深めた。
ゆっくりドアを開け中の様子を窺うと、そこには床にペタンと座りじっとテレビを見つめる香がいた。
だが実際に見ているわけではない。
その表情は完全に呆けてしまっている。
どこからどう見ても、放心状態の香。

そうなるのも無理はない、香が見ていたのはリョウのコレクションのビデオだったのだ。

リョウはこめかみを押さえながら、香の傍まで歩み寄った。
その距離50cm。
だが香はリョウの存在に気付かない。
相当重症のようだ。

リョウは、やれやれと天を仰ぐとその場にしゃがみ込んだ。

「もしも~し、香チャン?」

リョウの声を感知した香は、ゆっくりとリョウへ顔を向けた。
思考回路が完全にイカれていた香は、リョウの存在にようやく気が付くと、勢いよく後ずさった。
驚きのあまり声も出ないらしく、池の鯉のように口をパクパクさせている。

重い沈黙の間にあるのは、画面に流れる映像と女の声。

香と二人きりで、女のベトついた声を聞く事に気まずくなったリョウは、この妙な雰囲気を壊す為にテレビの電源を切った。

しんと静まり返ったと同時に、香は今までうまく呼吸が出来ていなかったのか、ふうと大きく息を吐いた。

「…も、最悪だわ…」

漏れ出た息と一緒に零れた声に、リョウは苦笑した。

「…ったく、人の部屋で何してんだよ、お前は」

脱力しきった香による説明では、どうやらリョウの部屋に掃除機をかけていたところ、床に落ちていたリモコンをうっかり踏んでしまったらしい。
その場所が丁度再生ボタンだったらしく、ビデオデッキに入っていたビデオが流れた…という事らしい。

「…で、あまりの衝撃に動けなくなった、と?」
リョウの言葉に、うなだれるように香はうなづいた。
「そりゃ災難だったな、香チャン」
ケラケラと笑うリョウを、香はキッと睨みつけた。
「笑い事じゃないわよ、もうっ!こんなのデッキの中に入れたままにしてるリョウが悪いんだぞ!!」
「オイオイ、ここは俺の部屋だぞ、そんなの俺の勝手だろ?」
「…だいたい、なんでこんなもの見るわけアンタって?全っ然理解出来ない!!」
「そりゃお前、健全な成人男性には必要不可欠なモンなんだぞ。ま、お前には到底理解出来んだろうなぁ」

未だ口を尖らせてブツブツ文句を言う香の傍へ近寄ると、リョウはニッと笑って質問した。

「で…俺のコレクションを見た感想は?」
「あっ、あんなモン見て感想なんてあるわけないでしょ!!」
「あんなモンって…香チャンもいずれはスルんだぞ、あーゆー事♪」
「!!へっ変な事言わないでよっ、バカっ!!」

真っ赤になって怒る香を笑いながら、リョウはなるほどと考えた。

「まぁ確かに他人のSEXなんて変な事っていうか、見てても滑稽だわなぁ。必死に腰振って、情けねぇ声出してさ」
リョウのあけすけな物言いに、香はグッと言葉を詰まらせた。

「けどさ…本当に望んだ相手とだったら、そんなふうには考えないんでないの?…多分な」
さっきとは違う落ち着いたリョウの声に、香は首をかしげた。
「ま、俺にはそんな経験ないから、わからんけどね」
多分な…

「え?」
リョウの言葉に更に首をかしげた香の頭を、ポンと叩く。
「さ、んな事よりコーヒー淹れてくれや。少し濃い目のヤツな」
よろしく~、と手をひらひら振りながらリョウは部屋を出て行った。

結局今の言葉の意味が分からなかった香は、リョウの後姿を見つめていた。
さっきのリョウの声と、どこか影が差したような笑顔がやけに胸に引っかかっていた。



リビングのソファに寝そべり考えるのは、さっき香に向けていった事だった。

いつだったか、もう顔も覚えていない男に言われた事がある。
『本当に望んだ女を抱くと、心まで満たされる』、と。

その言葉の意味は何となく理解出来たが、当時のリョウには必要ないものだった。

リョウが女を抱くのは、本能的な物欲を吐き出す為でそれ以外には何もない。
そこに感情や精神なんて曖昧なものは存在しなかった。
愛情という不確かで見えない物は、己の心を惑わせるだけ。
そんな物に手を出すのは愚かな事だと、鼻で笑っていた。

だが最近リョウは、以前は感じなかった想いが生まれている事に、気付き始めていた。
女を抱く時、心に感じる物など何もなかったのに、今は妙な虚しさを感じるのだ。
なぜそう感じるのか、分からない。

体だけでなく心も求めているのだろうか、そう思う事がある。

今まで、心ごと全部欲しいと思った女はいない。
深みに嵌れば、女なんてものは面倒で煩わしい生き物へと変わる事を知っている。
そんな厄介な想いをするのは、しんどいだけだ。

「心から望む女…ねぇ」

声に出した途端、頭を過ぎった女の顔にリョウは困惑した。
なぜ今香の事が頭に浮かんだのか、リョウ本人にも全く分からない。
香の笑顔がちらついて、リョウから離れない。

リョウは体を起こすと、頭を軽く振った。
脳内に浮かんだ映像を消すように。


「リョウ、コーヒー淹れたよ」

タイミングがいいのか悪いのか、香がコーヒーを運んできた。
リョウの注文どおり、濃い目の液体から湯気が上がる。

「サンキュ」
差し出されたカップを受け取ると、熱いコーヒーを一口飲んだ。

「私も一緒に飲もっと」
香のカップにはカフェオレが入っているようだ。
「そうしろ、なんたってドえらいモンを見ちまったからな。それ飲んで心を落ち着けるこった」
香はリョウの一言に、口に含んだものを飲み込もうとして咽てしまった。
「もうっ、思い出させないでよ!忘れたいんだからっ!」

フイ、と向こうを向いてしまった横顔を、リョウは笑いながら見つめた。

香のいろんな表情を見る度に、その透き通った瞳を向けられる度に、ふと心に灯る小さな火。

さっき頭を過ぎった香の笑顔の意味に、リョウは何となく気付いていた。
それは、必要ないと思っていた不確かで壊れやすい感情となって、心に積もり始めている。


いつか、香が欲しくなる。


漠然とした、それはある種の予感のようで。
薄いガラスのように、よく目を凝らさなければ気付く事はない。

だがこうして横顔を見ている今も、その存在を感じている。

見えない予感が確かなものに変わるのは、後もう暫くしてからの事だった。
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MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

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