ordinary life

シティーハンター二次創作と萌え語り

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
原作以上のお話です。
リョウちゃんが、ある事をきっかけに昔の事を思い出します。

<優しいキスをあなたに>


おはようの声と額に落とされるキス。
香と夜を共にするようになってから、俺の朝はこうして始まる。
以前は怒鳴り声とハンマーとのキスで強制的に起こされていた。
まあ、あれはあれでそれなりに幸せな朝の迎え方だったが、香の優しさに包まれて目覚める朝も幸せだと感じる。

だが俺は、心の中に妙な引っ掛かりがある事に気が付いた。
ずっと前にも、こんなふうに幸せな気持ちを感じた事がある。
優しくキスされる度に感じる、懐かしいような、だけど少し切ないような複雑な感情。
なぜこんな気持ちになるのか、どうしてもわからなかった。



暗い部屋を満たす熱に、のぼせたように脱力した香の身体を抱きしめると、濡れた唇から漏れる甘い吐息が胸にかかった。
今日も少しやり過ぎたかな、と少し反省した。
優しくしようという想いも、香にのめり込む度に次第に小さくなり、己の衝動にセーブが効かなくなる。
「大丈夫か?」
「…ん」
俺の問いかけに香は小さく頷いた。
きっと大丈夫なわけないんだろうが、俺を気遣い平気なふりをする。
俺の全てを受け止めてくれる、その愛しい身体をきつく抱きしめた。

「…ねぇ」
「ん?」
「リョウってさ、よくこうやってぎゅっ…てしてくれるよね…」
「んぁ?」
「その…終わった後に…」
小さな声で恥ずかしそうに話す香に、俺は思わず微笑んだ。
「イヤか?」
「ううん、そんなわけないじゃない。ただね…なんだか…」
言いにくそうに言葉を濁したまま、胸に埋めていた顔を上げた香はふっと笑った。
「子供みたいで、かわいいな…って、そう思ったの…」
「あぁ?」
意外なセリフに不意を突かれた俺は、変な声を出してしまった。
「お前なぁ、こんなイイ男に向かって子供はない…」
言葉を続けようとしたその時、俺の心の中に一瞬あの感情が過ぎり、ある光景が脳裏に浮かんだ。

俺の名を呼ぶ優しい声と、額に触れる唇の感触。
朝俺を起こしてくれる香と、その曖昧な光景が重なる。
だが、あれは香じゃない。
記憶を辿っていた俺ははっとした。

あれは…俺の母親。

真っ黒に塗り潰された俺の記憶の中に、微かに残っていたその面影はあまりにも小さ過ぎて、俺の中に存在していた事自体気付かなかった。
だが俺は、顔すら覚えていない記憶の中の面影を、母なのだとなぜか確信していた。
心が落ち着く声を、暖かい空気を、俺はまだ心の隅で覚えていたのだろうか。


「…どうしたの、リョウ」
急に黙ったまま考え込んでいた俺に、香は心配そうに声を掛けた。
「…いいや、なんでもねぇよ」
「なんでもないって顔じゃないけど…」
そう言って顔を覗き込む香に、俺は少し困った。
この女は普段鈍いくせに、妙なところで鋭い勘を働かせる。
今だって気遣わしげなその瞳が、『話して』と語りかけているが、俺は今の想いを話すことを少し躊躇った。
俺と同じように、香にも実母の記憶がない。
俺の話を聞けば、少なからず香に切ない思いをさせてしまうだろう。
しかし、ここで俺が何も言わなければ、同じように香は俺を心配する。
「…聞きたいか?」
「うん」
俺は暫く考えた後、ポツリと話し出した。

「お前が朝俺を起こす時にさ、ここにチュッてするだろ?」
人差し指で額をトントンと叩く。
「う、うん」
「その時にさ、なんか妙に懐かしいような複雑な気持ちになってたんだ」
「え…もしかして、いやだったの?」
「アホ、そんなわけないだろが。早とちりするんじゃないの」
俺は茶色の癖毛を撫ぜると再び話し始めた。
「なんでそんな気分になるのかずっと分からなかったんだが…さっきお前に子供みたいって言われて…思い出したんだ」
「…」
「懐かしいような気持ちになったのは、俺の記憶の中にあった母親のせいだってな…」
香の目が驚きに見開かれる。
「多分、俺の母親もお前と同じように起こしてくれてたんだろうなぁ」
「…でも、リョウって子供の頃…」
「ああ、俺もガキの頃の記憶なんてないと思ってたんだ。でも、ほんの少しだけ残ってたみたいだな…」

話し終わった俺は、香を見てぎょっとした。
香の瞳から大粒の涙が零れていたのだ。
「うわっ、泣くなよコラっ!」
「…よかった……」
やっぱり泣かせちまったか、と早くも後悔していた俺はその言葉の意味が分からなかった。
「リョウにもちゃんと残ってたんだ、お母さんの事…」
泣きながらそう言った香の顔に悲しみの色はなく、喜びに満ちていた。
「私には育ててくれた両親や、そしてアニキとの思い出がたくさん残ってる。…でも、リョウには…。だから、嬉しいの。お母さんの事憶えてた事が…」

俺は正直参った。
香はいつもそうだ、自分の事より他人の事を大切にしようとする。
それは俺に対しても同じで。
香だって実の母親の記憶なんて、恐らくないはずだ。
なのに己の過去は見ず、俺の不確かな記憶を自分の喜びに変えている。
俺は、香を悲しませるかも知れない…なんて考えたことを少し恥ずかしくも思った。
やっぱり、大した女だよ…お前は。

涙を拭うと、少し冷たくなった頬にそっと口付けた。
「…でもよく考えると、私ってリョウの母親みたいなものよね」
「なんでだよ」
「だって身の回りの事は全部私がやってるじゃない。実際手のかかる大きな子供みたいなもんよ、リョウって」
「このヤロ…」
反論したいところだが、香の言う事が正論なだけに言葉に詰まった。

「出来の悪い子供だけど、私が母親代わりになってあげるわよ」

そう言った香の笑顔に見覚えがあった。
そうだ、あの時俺の過去を知った香が、屋上で『これからもよろしく』と手を差し伸べ俺に向けた、あの笑顔だ。
お前はあの頃も今も全然変わらないんだな。
どんな俺でも、全てを難なく受け入れてくれる。
大きな心で
その心は、まるで母のようだと、柄にもなく感傷に浸ってしまった俺は、柔かく微笑む香にいつの間にか見蕩れていた。

~おまけ~
「…ん?ちょいまち」
「なに?」
「母親ってのはちょっと困るぞ」
「なんでよ」
「そりゃお前、母親には〇〇な事や〇〇な事が出来んだろ」
「…アンタの頭の中って、それしかないの?」




『リョウちゃんには幼い頃の記憶が残っていて、それをある時香ちゃんにポロッと話してしまう』というリクエストをくださったCHINATSU様、リクエストの内容とはちょっと違った感じになってしまいました…すみません。
でも自分では思いつかない設定だったので、書いてて新鮮な気持ちでした。
駄文ですが、読んでいただければ幸いです。
リクエスト、ありがとうございました!!
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://qazzz.blog31.fc2.com/tb.php/161-cb9d4882

MAY

Author:MAY
CH(リョウ×香)のイラストと二次小説を好き勝手に書き散らしております。
たまに他のジャンルの萌えを語る事も。
最近嵐さん(特にリーダー)にはまってます…。

名前:
メール:
件名:
本文:

この人と友達になる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。